短編2
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寝惚け眼を擦りながらベッドに座り込む私は先程まで隣にあった温もりを探すように、さんじ、と覚束無い口ぶりでサンジの名前を呼ぶ。寝る前に聞いた今日のサンジの予定を頭に浮かべようとするが、まだ覚醒しきっていない頭の中は真っ白なままだ。んー、と猫のように上半身を下げて、ベッドの上で伸びをしていれば、背後からくすくすと笑い声が届く。私は首だけを後ろに向けると、んー?とまた気の抜けたような声を出す。
「おれはここだよ、ナマエちゃん」
「さんじだ」
寝室の入り口に左肩を預けて、寄り掛かるようにして立つサンジは私を愛おしげに見つめる。シャツにジャケットを羽織ったサンジ、片手にはネクタイがそのままの状態で握られている。
「あ」
私は閃いたような声を出して、サンジに手招きをする。サンジは不思議そうな顔を浮かべたままベッドに近寄ると私の横に座り込む。ベッドのスプリングがギシっと音を立てるのと同時にサンジの手からネクタイが抜き取られる。
ネクタイをサンジのシャツの上から首に掛ける、そして学生時代に覚えた手順通りにネクタイを結んでいく。自分自身のネクタイを結ぶのはあっという間だが、他人のネクタイを結ぶのは難しい。あれ、こっちだっけ、と私が独り言をこぼしながらネクタイを結んでいくのをサンジは微笑ましそうに見つめてくる。
「新婚みたいだね」
サンジの口から出た甘いワードに私の手が一旦止まり掛けるが、サンジは気にしていないのか、はたまた可愛らしい彼女の反応を楽しんでいるのか、私の手の上に自身の両手を置いて、誘導するようにネクタイを結んでいく。
「ナマエちゃん、次はここだ」
ん、よく出来てる、そう言って背中まで伸びている私の黒髪を梳くように撫でるサンジ。そのまま、胸に抱くように頭を引き寄せ、私の頭の上に自身の顎を乗せる。
「……行きたくないな」
「今日は大事な用がある、って言ってなかった?」
「本音を言っちまえばさ、君より大事な用なんてねェよ」
そう言って、サンジは私の旋毛に顔を埋める。補給と言いながら吸い込むサンジは私を猫だとでも思っているのだろうか。
「補給?」
「車だってガソリンが無ければ走れねェだろ?」
「サンジが頑張れるように満タンに愛をあげましょうか?」
あァ、頼む、そう言ってサンジは家を出るギリギリまで私を堪能する、いってらっしゃいのキスは一度では終わらない。