短編2
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サンジが知らない筈がない、今だって私が何気なく投げ掛けた言葉を聞くや否や、それはもうアイドル顔負けの笑顔をこちらに向けて嬉しそうに嘘をついた。嘘と決め付けるのは良くない事だが、こんな丸わかりの反応をされてしまえば、鈍い私にだってバレバレだ。
「絶対に分かってる顔じゃない」
「いーや、初耳だよ。だから、君がおれにレクチャーして?」
ナマエセンセ、なんて特殊な呼び方をしてくるサンジに呆れたように溜息を付けば、サンジの口がパクっと私が吐き出した空気を迎えに行く。
「幸せをこぼしちゃ駄目だよ」
「……なっ、もう、」
私の言葉を待たずにサンジの唇が私の唇に触れた。突然のキスに驚きながらも拒否する理由が見つからず、私はサンジの唇を受け入れる。少しずつ角度を変えて付いては離れてを繰り返す唇。いつもはこの辺りで舌を入れ、自身の口内を弄ぶかのように甘やかすくせに今日のサンジはちゅ、っと音を立て唇を離す。呆気無い口付けの終わりに私は信じられないものを見るような表情で疑問を口にする。
「正気?」
「っ、くく、酷ェ言われよう」
笑っているが普段の自身の行いを理解しているのだろうか。所構わず、私にキスの雨を降らし、周りに人がいようといまいが唇を離してくれないくせによく言う。
「唇のキスの意味を言ってごらん」
「レクチャーなんて無くても大丈夫なくせに」
「上手に言えたら、君に特大サービスのキスをしてあげる」
私の下唇に指を当てて、感触を楽しむかのようにしなやかな指を遊ばせるサンジ。言いなりになるのは癪であったが目の前のサンジの表情を見て断れる自信が今の私には無い。
「愛してるわ」
唇へのキスが意味するのは――深い愛情。底無し沼のように終わりが見えないサンジから向けられる愛のようだ。
「おれも、心から君を愛してる」
笑みを深めたサンジはもう一度、私の唇に自身の唇を合わせる。特大サービスのキスという割にはその唇は直ぐに離れていく、思っていたよりも軽いキスに少し落胆してしまう。
「……場所を覚えてて」
吐息混じりの声が鼓膜を撫で、柔らかな感触が耳朶に触れる。咄嗟に漏れた自身の高い声に慌てて口を手で覆えば、クスっとサンジが笑みをこぼす。耳朶の次は髪に瞼、鼻、頬と下に下がっていき、首の上でリップ音が鳴った。
「君への執着心」
なんてね、と誤魔化しに失敗したサンジの低音はベッドの上で聞くサンジの声と重なった。私に跨って、君しかいらない、と淫らに動く雄の声。私はキスで余計なスイッチまで押してしまったのかもしれない。