短編2
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どうしても苦手なものがある、大体の料理に入っているあの飴色に輝くブツ。サニーのキッチンを預かっているサンジには私の好き嫌いもしっかりと把握されている、口に残る苦味、どれだけ薄切りにされても小さく細切りにされようと苦手なものは苦手だ。口に入れて噛む事は出来るが顔を顰めてしまうのは仕方ない事だ、だが、作り手であるサンジにはとても失礼な事をしていると思う。敵を見つめるような鋭い視線で皿の上を睨む私の頭を撫でて、今日は一つだけ食べてみよっか、と提案してくれるサンジに申し訳ない気持ちになる。
「……ごめんなさい」
「今は食糧難でも無ェし気にする事ねェよ」
はい、あーん、と差し出されたスプーンには今日のノルマである玉ねぎが乗っている。私は恐る恐る口を開き、スプーンを迎えに行く。舌に乗った玉ねぎは相変わらず相容れない味をしているがサンジが調理したと思えば、少しはマシに思える。
「ん、いい子」
「……一つだけよ?それにあんな小さくして貰ったし」
「なら、明日は二つ」
私が残した皿の上の玉ねぎをスプーンで端に寄せると、サンジはそれをスプーンで掬い取る。
「おれの料理は愛情だよ、玉ねぎだって例外なくね」
情なんて目に見えて分かるもんじゃねェけど、そう言ってサンジは玉ねぎを自身の胃袋に収める。
「だから、いつかさ、君に完食して欲しいなァ、なんて思ったりして……はは、無理に食わす気はねェから安心してね」
明日は二つ、明後日は大丈夫だったら三つ、と私を甘やかすサンジ。このままじゃ、サンジの愛情を食べ切るのは果てしなく先になってしまいそうだ。
「明日は五、うっ、いや、十……」
しょっぱい顔でサンジの顔の前に両手を差し出す私にくすくすと肩を揺らすサンジ。そんなに笑う事か、と不貞腐れる私の頬を指でツンツンと突きながら可愛いのシャワーを浴びせてくるサンジ。
「こんな可愛い君に嫌いな物を出すなんて鬼みてェな真似出来る気がしねェ」
「ふふ、ちゃんと出して」
それで、あーんして食べさせて、と甘えるようにサンジの右腕に擦り寄れば、サンジの指が私の下唇をなぞる。
「その後は口直しに食べさせ合いっこなんてどうかな?」
「何を?」
「甘いデザート」
吐息混じりの口直し、手を合わせる代わりに唇を合わせて、マナーに煩いパートナーのお気に召すままに私は瞳を閉じる。苦味を上書きするようにこのデザートの甘さに酔うのだった。