短編2
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私はサンジにとって妹のような存在だったのだと思う。ナミやロビンよりも若かった私はサンジにとって将来が有望なレディ枠でしかきっと無かった、若さは武器というが時に若さは残酷だ。色気なんてものは無く、子供に少しの肉付けをした胸。隣に並ぶにはあと一年?二年?指折り数えては年の差を恨んだ、海賊である私達の未来を保証してくれるものなんて何も無い。気を抜いていれば明日にだって命を散らす可能性だってある、そんな中でこの大きくなってしまった恋心を散らせる自信は私には無かった。
君は変わらないね、二年が経ってもまだ私はサンジにとって妹なのだろうか。見た目だって変わった、女の子と呼べる年齢だって過ぎた。だが、目の前のサンジにダメージを与える事すら出来ない私はレディとして終わっているのだろうか。途端に足元が真っ暗になるような不安が私を飲み込もうとする。
「……嘘だ、変わらないのはおれの方だ」
サンジはそう言うと手元の煙草を灰皿に押し付ける、そして分け目の変わった自身の前髪をくしゃりと乱して困ったように笑う。
「君を諦められないまま二年が過ぎちまった」
「冗談?」
「冗談にしたかったらドーゾ」
目の前に座るサンジは頬杖をつき、私を見つめている。以前からこうやってサンジは私を見ながらレシピを書いたり煙草を吸うのが好きだった。子供というには大き過ぎる妹の成長を見守る兄のような視線が悲しくて仕方が無かった、目をハートにして甘い言葉をポンポンと口にするサンジとは大違いでつい目を逸らしていた事を思い出す。
「……妹でしょ」
「おれには妹なんていねェけど」
「サンジには似ても似つかないちんちくりんな妹がいるじゃない」
私、そう言って自身を指差してヘラリと笑う私は道化師のようだ。泣きたいのに笑う道化師。
「泣かないで、レディ」
「泣いてないよ」
頬は濡れていない、瞳の水分だって溢れていない。なのに、サンジは私に手を伸ばして乾いた頬を指で撫でる。
「おれの弱点って知ってる?」
「……女の子」
「それも間違いじゃねェけどさ、好きな子の泣き顔に弱ェの」
目尻に浮かんできた水の粒をサンジの指が受け止める。
「あともう一つは君だよ」
オニーチャン呼びも悪くねェけどおれは君の恋人になりたいんだ、とサンジは私を見つめる。あの時、逸らしていた視線がピースのように重なり、やっと答えに辿り着いた。
「(……好きな人を見る目だ)」
重なったその碧は私と同じ目をしていた。