短編2
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サンジは聞き上手だと思う、決して話し下手というわけでは無いが人の感情の変化に敏感なのかサンジには相談する前にバレてしまうのだ。ん、と広げられた腕は無条件で彼女を甘やかす。そして最初は相談なんてするつもりが無かったのに口からポロっと弱音がこぼれる、頑張れだとか辛かったねだとか表面上だけの励ましを口にされた事は無い。ただ、よしよしと撫でる優しい手と数年長く生きてる先輩として少しだけ人生のヒントをくれる。そして最後に、君らしくやってみな、と背中を押してくれるのだ。
サンジが発する「ん」の音がいつでも彼女を安心させる、ん、と差し伸べられる大きな手も、ん、と彼女からのキスを待つ尖った唇も、んー、と寝惚けている時に出す間延びした声も一つ一つが愛しい。
「サンジくんのその、ん、ってやつ好き」
「意識してなかった」
「だからいいのかも、素の感じで」
いつもだって素だよ、とサンジは片手で頬杖をつきながらベッドに寝転がる彼女の伸びた前髪を指で横に流す。
「素ねぇ」
彼女はそう言うと自身の髪に触る手にするりと指を絡ます、そしてゆらゆらと繋いだままの手を揺らせば、ちゅ、と軽めの口付けが手の甲にされる。
「やっぱり格好つけ」
「元がいいから格好がついちまう」
「ふふ、そんなキャラじゃないでしょ」
おれは正真正銘の二枚目だよ、それに君はこういう男がタイプだろ、そう言ってサンジはくすくすと肩を揺らす。その瞳は楽しげに三日月を描いている、どちらかと言えばニヤニヤと言った表現が正しい。
「はいはい、格好いいんじゃないかしら」
そう言って枕に顔を埋めてしまった彼女、サンジは繋いだままの手の甲を親指ですりすりと撫でると、ナマエちゃーん、と彼女の気を引こうとする。
「ナマエちゃんはいません」
「こんな丸見えでかい?」
サンジは繋いでいた手を離して、彼女の横に同じように寝転ぶと自身の方に彼女の体を引き寄せる。これで可愛い顔も丸見えだな、と彼女の形の良い唇をふにふにと親指で遊ばせるサンジ。
「私だってサンジくんのタイプは熟知しているわ」
「っ、くく、愛だね」
サンジの胸板に頭を預けて目線だけを上に向ける彼女、上目遣いのような体勢でサンジをジッと見つめる彼女の特徴的な猫のような目。
「……私がタイプだといいなぁ」
熟知していると見栄を張ったくせに口に出そうとした途端に自信が無くなってしまう。だが、目の前のサンジは彼女の好きな「ん」の音に濁点をつけたような声を出して枕に顔を沈めている。そして、そろりと顔を上げて、正解だよ、と彼女の頭を撫でた。
「ん」
彼女は恥ずかしそうに頷いて、サンジの胸板に頭をぐりぐりと押し付ける。その背中をトントンと優しく叩きながらサンジは彼女の言葉を理解する、彼女の発する「ん」の愛おしさに気付いてしまったのだ。
「おれも好き」
「……何が?」
「ふっ、ナマエちゃんが」
サンジはそう言って腕の中の恥ずかしがり屋が逃げてしまわないように回した腕にぎゅっと力を入れ直すのだった。