短編2
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
甘い残り香を残した部屋にその声はやけに響いた。夢だったら良かったのに、と後悔を滲ませれば自身の腹に回されていた腕から遠慮が消えた。冷たい床の上に押し倒され、倒れた私の体を自身の両足で挟むようにして膝を立てるサンジ。片手だけを拘束された状態で私はサンジの垂れ下がった顔を見つめる、こういう場面で片手しか拘束しないあたりが目の前の男の優しさであり、弱さでもある。
「なぁ、夢だったら良かったってどういう意味だい?」
「そのままの意味よ」
そして、これが私の弱さだ。私の言葉足らずの言い分を否定する事もなく、サンジはただ静かに顔を歪める。穏やかな月のような笑みが似合うサンジには随分と不釣り合いな表情だ。
「あなたとの時間を否定したいわけじゃないの、ただ、幸せ過ぎて怖いのよ」
都合のいい夢だったら、またそのうち見れるでしょ、と私は空いた左手でサンジの金髪をくしゃりと撫でる。
「君は馬鹿だね」
「ふふ、ひどいわ」
「……君の方が何倍もひどいよ」
勝手におれの愛を夢にしちまうんだもん、と口にするサンジ。先程よりも幾らかマシな顔をしたサンジは私の手に甘えるように頭を擦り付ける。
「現実はいつかひっくり返るもの」
「……ひっくり返ってもさ、どちらかの気持ちが生きてりゃ、いつかまたひっくり返せるよ。それに、おれは君の事だけは諦めねェって決めてるし」
「いつ決めたの」
「つい、さっき」
夢にされてもおれは何度だって君を起こして愛を叫ぶよ、とサンジは私に覆い被さるようにキスをする。普段だったらマナーだと言って伏せられるサンジの瞼は伏せられる事なく、私をジッと見つめる。目を閉じなければ夢は見られない、とでも言いたいのだろう。
「んっ……」
金色のカーテンが私達のキスシーンを隠すように揺れる、サンジの厚い舌がこの甘やかな戯れは現実だと何度も訴えかけて来るようだ。出入りする舌に自身の舌を絡め、覚めない夢を見る。
「これが夢だったらこれだけじゃすまねェよ、レディ」