短編2
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サンジはあまり嫉妬をしない、あんなに嫉妬深そうなのに実際はとても寛容だ。私から知らない香りがしても私が男の名前を出しても毎回、サンジはうんうんと相槌を打ち、一切嫉妬を見せない。それがほんの少しだけ寂しくて私はまた同じような事を繰り返す、わざと男物の香水を買って自身の手首に馴染ませる。女物と違って少しだけスパイシーなこの香りはサンジの愛用している香水よりも匂いが濃く、大人の色気を感じられる。そして、別に仲良くも無い顔見知り程度の男の名前をサンジの前で口にする。格好良かった、素敵だった、薄っぺらい称賛にサンジはまたうんうんと頷いて耳を傾ける。顔は蕩けそうな程に甘いのに態度や反応は甘さの欠片もない、付き合う前の方が私を縛ってくれていた気さえする。
「それで?」
話の続きを促す余裕すらあるサンジに私の口はつい我慢出来ずに緩んでしまう、サンジは嫉妬しないの、と。
「嫉妬?誰に?」
「私と仲良くしてる男の子達」
別に仲良くはないのに見栄を張ってそう言えば、サンジは私の複雑な心に気付いたのだろう。何故かクスクスと肩を揺らして、へぇ、と意味深な声を上げる。
「君はどうやら、おれに嫉妬されたかったみてェだね」
その悪趣味な香水もかい、棘のあるサンジの物言いに私は困惑する。サンジ、と名を読めば視線はこちらに向けられるが普段の穏やかさはない。
サンジは私の手をグイッと引っ張ると立ち上がって、バスルームに続く廊下を進む。何故、こんな時間にバスルームに、と頭にハテナを浮かべながらその静かな背中を見つめる。バスルームに着くと、サンジは衣服のままバスルームに私を連行する。そして、勢い良くシャワーの蛇口を捻り、温度が人肌になったのを確認するや否や、シャワーヘッドを掴み、私にお湯を掛けるサンジ。
「ねぇ、サンジ!いきなり何!」
白地のワンピースがお湯に濡れ、体の線を強調して淡いブルーの下着が透けていく。サンジはシャワーフックにシャワーヘッドを固定し、自身が濡れる事も気にせずに私を壁に縫い付ける。水に滲んだ口紅を剥がすように唇に荒々しく噛み付くサンジ、普段のスマートさからは考えられない獣のようなキスを何度も繰り返す。抵抗しようにも私の手はサンジの片手によって頭上にまとめられて、壁に押し付けられている。
「ん、っ……」
「お望み通りかい」
「何がよ」
「嫉妬に狂ってるおれはどうだい?」
嫉妬なんてみっともねェ真似しねェように自制してたって言うのに君のせいでパーだ、とサンジは苦虫を噛み潰したような顔で口にする。
「どこまで済ませた?」
デート?手繋ぎ?キス?それともセックスかな、とサンジはわざと戯けるようにそう私に尋ねる。だが、その顔は怒りを必死に抑えるピエロのようだった。
「っ、くく、言えねェとこまで済ませたのかな?」
「違う!」
「何が違ェの、こんなクソ趣味の悪ィ匂いプンプンさせて何もねェって?」
サンジの口調から余裕が消え、ピエロの仮面が割れる。怒りのままに私に当たるサンジなんて今まで見た事が無かった為、私はつい黙り込んでしまう。
「だんまりは肯定になっちまうよ、レディ」
チラリと私の顔を見つめるその瞳は私に当たりながらもサンジ自身が傷付いているように見える。
「……香水は自分で買ったの、サンジっていつも余裕だからちょっとだけ嫉妬してくれたらなぁって思って。男の子達も友達じゃないわ、ただの顔見知り程度」
あなたに愛されている自信が欲しかっただけ、と言えばサンジの手が私の両手を解放する。そして、その代わりにサンジの腕が私の腰を抱く。
「……おれの嫉妬は君が思うような可愛いもんじゃねェよ、こうやって君をここで無理矢理に犯して、君がおれのものだって分からせてやりてェぐれェには乱暴でお粗末だ」
「随分と過激ね」
「だから、普段は我慢してんの」
君を食い殺しちまいそうだから、とサンジは言う。唇には私のが移ったのか、滲んだ口紅が付いている。その赤はまるで血のように私の瞳には映ったのだった。