短編2
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綺麗という言葉を何度も飲み込む、この男はカッコつけだから綺麗よりもカッコいいと褒められたい筈だ。だが、陽の光に照らされた髪は海賊というよりもお貴族様のように艷やかで触れれば見た目以上に柔らかな毛質をしている。
「ふふ」
「なぁに、思い出し笑いかい?」
鏡越しにサンジがこちらを見る、瞳という水晶の中で漂う穏やかな波が私を包み込むようだ。
「思い出し笑いする子はえっちなんだって」
「どこ情報?」
「ナミさん」
「本当?」
「本当、君がよくしてるって」
は、と情けない声を出した私にサンジはニヤリと笑い、後半は嘘、と茶目っ気丸出しの声でそう言った。
「これ以上、余計な事を言ったらセットしてくれなくなっちまいそうだから黙るね」
「いい判断ね」
そう言ってサンジの首にケープを掛ける、少しだけキツく巻かれた首元にサンジは苦笑いをこぼしつつ大人しくしている。
「お客様、今日はどんな風にしますか?」
「彼女の好みで」
「ウタの好みなんて知らないわよ」
「違ェって、君の好みでおれを彩って」
ごっこ遊びのような会話は一枚上手なサンジの返答によって続けられる。
「彼女さんは幸せですね、こんな彼氏さんがいて」
「スゲェ可愛い天使みてェな見た目なんだけどさ、気はちょっと強ェの」
熱されたコテを持ちながら、私はサンジの柔らかな髪を指で掬い上げる。サンジの甘くて擽ったい惚気に耳を傾けながら、私はセットに取り掛かる。
「なら、彼女さんに似合う色男にしちゃいますね」
恥ずかしさから私は揶揄うようにそう答えた、それに対してサンジはおかしそうに肩を揺らす。そんなサンジの様子に気付かないフリをしながら私はテキパキと手を動かす、元々の素材が整っているサンジを自身の手で美しく彩れるのはやはり楽しい。
「なァ、お姉さん。彼女の好みってどんなだと思う?」
「……毎朝、鏡を見ていたら分かる筈よ」
遠回しでド直球の告白にサンジは顔を緩める。
「見飽きた顔だと思ってたけど悪くねェかも」
「なら、少しだけ目を瞑ってて」
次、目を開けた時には私好みになったあなたが鏡に映る筈よ、そう言って私はサンジの金色をコテで癖付けていく。ふわふわと踊る毛先に指を絡ませて、私はくすりと笑った。
「綺麗よ、ダーリン」