短編2
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SNSなのでよく見る○○しないと出られない部屋、そんな非現実的な部屋は勿論、私達が生きる世界(げんじつ)には存在していない。それにこんな部屋があってもサンジとならば直ぐに突破してしまいそうだ、サンジは私という恋人に激甘で四六時中好意は垂れ流しだしキスだって恥ずかしがらずに求めた以上の口付けをくれる、それに体を重ねる事だって。だが、大量の媚薬が部屋に現れたら大変だ。サンジは間違いなく一人で飲む、これだけは悲しい事に断言出来る。
現実は案外つまらない方が平和なのかもしれないと私はSNSの画面をスクロールしながら胸をホッと撫で下ろす。だが、首に触れる悪戯な唇の持ち主はそんな私に気付かずに一生懸命、求愛行動に勤しんでいる。
「くすぐったいわ」
「スマホに夢中な恋人へのアピールだよ」
構ってほしいっていう可愛い可愛いアピール、サンジは自身の行為をそう表現すると諦めずにアピールを繰り返す。
「あなたの事を考えてたわ」
「へー、どんな?」
「サンジとなら怖いもの無しだな、って」
あなたの行動次第だけど、という本音は心に留めて私は体を少しだけ起こして寝返りを打つ。サンジの腕が私の体を引き寄せて、先程よりも体が密着する。
「君の怖いものってなぁに」
「聞いてどうするの」
「おれが倒す」
サンジの真面目な顔から発せられる脳筋のような発言に私は堪らず吹き出してしまう。
「ふふ、倒してくれるの」
「君を救うヒーローにでもなろうか」
昨晩、一緒に見た映画の影響だろうか。ラストはヒロインとのキスで終了したその映画を真似るように私はサンジの唇にキスをする。
「昨日のラストと一緒だね」
「あら、不満?」
「いいや、ヒロインよりも映画に夢中な君が可愛くて昨日からキスしたくて堪らなかったよ」
あんなにしたくせにサンジの唇は随分と欲張りなようだ。そのせいでエンドロールを見逃し、サンジの色気のあるキス顔を間近で見る羽目になった。
「サンジは映画より私に夢中だったの?」
「当然」
まるで常識だとでも言うようにサンジは大きく頷くと、それとは反対に小さな声で内緒話のようにこう口にした。
「君もおれに夢中だったらいいのに」
「まだ足りないの」
「全然、足りねェなァ」
私が出れないのは非現実な部屋ではなく、この愛情深く重い恋人の腕なのかもしれない。これを払い除ける手段はもう忘れてしまった、体を縛り付ける鎖にしては随分と生易しいサンジの腕の心地良さに私は体の力を抜いて、その鍛えられた胸板にそっと頭を預ける。
「これ以上、夢中になったら大変ね」
目を閉じる私を腕に抱いて、サンジは責任は取るよとまた媚薬のような甘い毒を私に垂らした。