短編2
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これ着てみてくれねェかな、そう言ってサンジから手渡された紙袋。ニヤケ面を隠しきれていないその表情に嫌な予感しかしないが中身を見ずに断るのは何だか申し訳なくて、私はその紙袋の中を覗き込む。
「服……?」
「ただの服じゃねェよ、これは男の夢さ」
ジャジャーンと口で効果音を鳴らしたサンジは中に入っている服を取り出して私の目の前にそれを差し出す。白と黒のシックなデザイン、だが、丈だけが異様に短いそれはメイド服と言うものだろう。
「メイド服?」
「君に似合いそうだろ?」
それはどうかしら、と苦笑いを浮かべてメイド服を自身の体に合わせればサンジは袖を通してもいないのに親指を突き出してありったけの褒め言葉を寄越す。自身の見立ては間違ってなかった、とキラキラした瞳を向けられれば単純な私はその気になってしまう。
「今回はサービスよ」
そう言ってウィンクを一つ投げれば、サンジは大きく頷いてその場に正座をする。まるで利口な犬のようなその姿にくすっと笑みをこぼして、私はその金色の丸い頭を優しく撫でた。
「着替えて来るからいい子にしてて」
サンジは私の手に頭を摺り寄せて、利口にしてるよ、と上目遣いでこちらを見上げるのだった。
メイド服は丈を除けば、変な点は無かった。フリルとレースがたっぷりとあしらわれ、フリフリのカチューシャまで付属してあった。姿見の中ではうまく着こなした私が映っていて、どこからどう見ても立派なメイドだ。しゃがんだりしなければ丈の心配もしなくて良さそうだ。そして、サイズのピッタリさについ笑ってしまう、教えなくてもミリ単位でサンジに伝わっている事に驚けばいいのか、納得すればいいのか。とりあえず、サイズアップしないように気を付けようと決心する。
「着替えたわよ」
そう声を掛けて、キッチンの中に入れば正座したままのサンジが勢い良く立ち上がって私を視界に入れる。さっきのサンジの真似をしてジャジャーンと戯けてメイド服の裾を軽く摘んでみれば、サンジは静かに片手で自身の口を覆う。
「……想像以上だ」
「ふふ、ご主人様のお気に召しましたか?」
「は」
「ご主人様ネクタイが曲がってらっしゃいますよ」
サンジのネクタイに手を伸ばそうとすれば、その手はサンジに取られて体勢を崩す。気付いた時にはサンジの腕に腰を抱かれ、厚い胸板にキスをしていた。そして、サンジのシャツに自身の口紅が付く。
「サンジのせいでシャツに付いちゃったじゃない」
「ご主人様だろ?」
ご主人様のシャツを汚すなんて悪ィメイドちゃんだ、そう言ってサンジは意地悪く笑う。さっきの悪ノリへのやり返しだろうか。
「……意地が悪いご主人様ね」
「っ、くく、今更だね」
それに痕はこっちに付けなきゃ駄目だよ、とサンジは自身の曲がったネクタイに指を引っ掛けてシャツのボタンを器用に外す。そして、開いた首元を指で指すのだった。