短編2
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二日間の充電期間を終えたサンジくんは昨晩まで人を抱き潰していたとは思えない程のスッキリとした顔付きで仕事に向かった。普段よりも艶々とした肌を嫌味混じりで指摘すれば、鼻歌混じりの返答が返ってきた。
「君に似合いの男前の完成だ」
「はいはい、いってらっしゃい。男前さん」
私は怠さが残った重い腰を擦りながらその背中を玄関から追い出した、扉の向こうから聞こえたサンジくんの鼻歌は充電満タンを私に知らせてくる。
「……まったく、もう」
時々、ネジが緩んでしまうサンジくんを可愛いと思ってしまっている時点で私の負けは確定なのだ。完全敗北と言ってもいいくらいだ。
だが、そんな艶々な状態で仕事に向かったサンジくんは帰ってきた頃には充電切れを起こしたような状態だった。サンジくんの特徴的な眉毛はふにゃりと下がり、禁断症状を起こしたように手は震えている。そして、いつもよりも煙草の匂いがキツイ。大丈夫か、と伸ばした私の腕はサンジくんに引き寄せられて気付いた時にはサンジくんの腕の中だった。
「サンジくん?大丈夫?」
「……あーー、ナマエちゃんだ」
「?」
サンジくんは私の頭を自身の胸元に寄せて、ぎゅっと抱き締めてくる。私はその大きな背中に手を回してトントンとゆっくりと叩く。
「二日間ずっと君がいたから」
君がいねェと調子が出ねェ、と深刻そうな声色で伝えられた甘い戯言。
「ふふ、充電したんじゃないの」
「半日で空っぽさ」
「全然駄目じゃない」
「……君はどう?平気だった?」
黙秘で、と誤魔化そうとする私の顔を覗き込むようにサンジくんは身を屈める。見透かすような碧眼にいらない事まで言いそうになり、私は口を噤む。自身で作ったお弁当はサンジくんが作ったものよりも味がしなかった事、仕事中にふとサンジくんの顔を思い出した事、帰り道に自身の寂しそうな顔が電車の窓に映った事、そして、サンジくんが帰ってくるのを今か今かと玄関で待っていた事、全部サンジくんには秘密だ。
「なぁ、教えて」
「平気だったよ」
強がりはいけねェなァ、とサンジくんは私のぎゅっと握った手のひらをゆっくりと開く。
「……強がりじゃないわ」
「こんなに手が冷てェのに?」
帰って来てからずっと此処で待ってたんだろ、とサンジくんは私の行動を見てきたかのように当てる。
「遅くなってごめんね」
「……私が寂しかったみたいじゃない」
「っ、くく、おれが限界だったんだよ」
深刻な君不足で、とサンジくんは肩を竦めて笑う。こうやって強がる私に寄り添ってくれるサンジくんはやっぱり年上で憎らしい。
「だからさ、今日も充電させて?」
勿論、エッチな充電は無しで、と明日の私への配慮まで忘れない恋人に降参を言い放つまであと数分。目の前の煙草臭い体に抱き着くのだった。