短編2
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サンジとのキスは大人の味がしてちょっとだけ苦手だ、苦味に触れる度に自身のおこちゃまさが露わになるような気がして恥ずかしくなる。煙たい口付けに生き物のように口内を犯す舌先、サンジが目を閉じていてくれて良かった。慣れない苦味に顔を顰めそうになっては表情筋をフル稼働させ、サンジのキスに酔ったフリをする私は滑稽だから。私の為に禁煙して欲しいなんて言う気は無い、それに煙草を吸う事に不満は無いのだ。ただ、煙草の苦味が残ったキスにまだ慣れそうに無いだけだ。甘い彼がキスをする時だけ知らない人間のように見える、これをサンジに伝えたら出てくるのは甘い彼か、それともほろ苦い彼だろうか。煙を燻らすサンジの横顔にそんな事を思った。
「……話があるんだけど」
私の正面には正座したサンジ、その顔は深刻そうな表情を浮かべていて私は別れ話かと疑ってしまいそうになる。自身の膝の上で手をグーにして、サンジは覚悟が決まったのか私の瞳を真っ直ぐに見つめてくる。
「おれとのキスは嫌いかい」
「へ」
「……時々、スゲェ嫌そうっつーか早く終わりてェんだろうな、って」
サンジはそう言った途端、うるっと瞳に水分を含ませる。
「おれって下手……?」
「……煙草の後だとちょっと苦くて嫌なの、だけどサンジとするキスは嫌いじゃないわ」
気分を害したらどうしよう、私はそんな思いでサンジの様子を窺う。だが、サンジの様子は私が思っていたものとは少し違った。
「それってさ、愛だよね」
「愛?」
「自分で言うのもアレだけどおれってかなりのヘビースモーカーだからさ、もうキスしねェって言われてもおかしくねェじゃん?」
なのに、君は拒否したりしねェでたっくさんキスしてくれるからさ、申し訳ねェと思いながらも愛されてる喜びでどうにかなっちまいそうだ、とサンジはニヤけた口元を片手で覆いながら私を見つめてくる。
「好きな人とのキスだもん、拒否出来ないよ」
苦くて口を離したいと思っても私の体はそうじゃない、苦みを求めるかのようにその唇に舌に食らいつくのだ。もっと、もっと知らないサンジを味わいたい、と。
「……君が甘ェから気付かなかった」
そう言って、サンジは遠慮なく私の唇に自身の唇を押し付けた。苦くてごめんな、という謝罪は貪るようなキスの前では意味をなさない。そして、このビターなキスを拒絶するどころかもっと、もっと、と強請るように絡めた自身の舌はこの甘過ぎる愛の前では麻痺してしまうのだろう。