短編2
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構って、構って、と尻尾を振るのはいつだってサンジだった。そして、また後でね、と一撫でされてサンジはクゥンと切ない犬のような鳴き声を上げて私の背中に張り付くまでがセットだった。だが、今の私の状況は普段とは真逆だ。レシピを書くサンジの背中に張り付いて、頭をゴンゴンとサンジの背中にぶつけている私。
「おでこ赤くなっちまうからやめようね」
なら、その手を中断してくれればいいんじゃないの、と自分勝手な文句を一度飲み込んで無言の訴えを繰り返す。
「ナマエちゃん、眠ィなら寝室で寝な」
「ん〜〜〜」
睡魔に支配され始めた脳味噌は上手く動かない。そして、サンジのぬくもりを手放すのが惜しくて寝室に行く気にはなれない。
「今日のナマエちゃんは悪い子だね」
サンジの手がやっと止まり、ゆらゆらと船を漕ぎそうになっている私の体を支えてくれる。仕方ないなァ、と副音声が聞こえてきそうなサンジの甘ったるい表情につられて私もふにゃふにゃと笑みをこぼす。
「ん、わるいこだからサンジと寝る」
片手で顔を覆ったサンジは何故か天を仰いでいるが私は気にせずにサンジの胸に頭を預ける、サンジの少しだけ早い心音は子守唄には向いていなさそうだ。
「ドキドキしてるね」
「犯人の自覚ある?」
「ふふ、逮捕〜」
サンジの両手首を握ってそう口にすれば、またサンジの心音が賑やかになった。それにくすくすと肩を揺らしていれば、サンジの長い腕に捕まってしまう。
「君がね」
額にサンジの唇が触れる、それだけで逃げる気なんて何処かに行ってしまうから不思議だ。
「……寝かせたくねェなァ」
「する?」
サンジは私の頬に片手を添え、首を横に振る。
「待ては得意なんだ、君と違ってね」
私の耳元に顔を寄せたサンジは、君が起きるまでだけど、と色気のある低音で鼓膜を撫でる。
「だから、寝た方がいいぜ?ナマエちゃん」
私を抱え直したサンジは寝室までの廊下をゆっくりと歩く、長い腕はまるで檻のように私を囲い、逃げを許してはくれない。目覚めた時にはきっとこの檻の中で私は淫らな鳴き声を上げるのだろう。