短編2
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五分だけ、そう言ってサンジは私の膝の上に転がった。眉間に皺が寄っているのは機嫌が悪いわけではなく、この突然下がった気圧のせいだろう。頭か目の奥か、サンジは痛みに堪えるように渋い顔で目を閉じた。
「頭?目の奥?」
「……あー、どっちもかな」
普段羨ましいくらい健康体なサンジも低気圧には弱いらしい、時々こうやって痛みを訴えては私の膝枕を強請りに来る。見た目よりも柔らかな金髪に指を通し、サンジの痛みが和らいでいくのを待つ。
「痛いの痛いの私に飛んでけ」
「君が痛ェ思いするのは嫌だよ」
隠れていない片目を開けてサンジは私の気休め程度のおまじないに突っ掛かる。私だってサンジにそう思ってるわ、と伝えればサンジの表情が先程よりも柔らかくなる。
「その優しさだけで十分だよ、レディ」
「……ん」
こんな時まで優しいサンジは私の右手を掴み、自身の目元に蓋をするように被せる。
「これが一番効くんだ、おれ専用アイマスク」
「いつ専用になったのかしら」
「これはナミさんにも譲れねェなァ」
普段よりボリュームを抑えられた低音が独占欲を鳴らす。
「私、自分の手が嫌いだったの」
「どうして?こんなに綺麗なのに」
サンジは私の手に指を滑らせる、その指先ひとつ取ったってサンジの手の方が綺麗だ。料理人の命と言われる手とは違って自身の手は武器を使うからかマメが出来やすい、それに女の子らしい小さな手でも無い。桜貝のような爪でも無ければ、やけに筋張った手、ナミやロビンと手比べなんてしたら私の指先だけが飛び出してしまう。
「……小さい手が良かったなぁ、って。でも、今はサンジのアイマスクになれる手がちょっと誇らしいの」
大きくて良かった、とホッと息をつくようにそう口にすればサンジの大きな手が私の手を目元から退けて自身の手と重ね合わした。
「おれと比べたら可愛い可愛い女の子の手だよ」
私の手の上から飛び出したサンジの長い指が私の指を絡め取る、飲み込むようにサンジの手のひらに隠されてしまった私の手。
「小さい手だ」
そう言ってサンジは宝物に触れるように優しい手付きで手の甲を撫でる。擽ったいようなふわふわした気持ちのまま、私はされるがままだ。
「ちゅ」
「あ、こら」
戯れるようなキスをされたって余計にふわふわしてしまうだけだ、体調が悪いサンジを労りたいのに今は私の方が熱があるみたいに顔を赤くしている。
「真っ赤」
かっわいいなァ、もう、と本調子になってきたサンジは約束の五分と同時に体を起こして私をその腕で抱き締めた。