短編2
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サンジを攻略するのは至難の業だ、攻略自体が大変なのではなく敵が多過ぎるのだ。世の女性、全員がサンジに選んで貰える権利を持っている。あっちの女性にヘラヘラ、こっちの女性にメロメロ、サンジの一番になるのは一体、誰なんだろうか。
「……さっきの子、可愛かったわね」
「あァ、愛らしいレディだった」
サンジと私は恋人同士ではない、私の一方的な片思いだ。なのに、私はサンジの別の恋を応援しては背中を押し、後悔を募らせる。後悔するぐらいなら気持ちを伝えるべきだと理解しているがサンジの目線の先にいる女性を見る度に気付くのだ。私はサンジのタイプに当てはまらない、と。きっと、私はサンジに選んで貰える権利を持っていない少数派だ。
「ああいう子がタイプ?」
自身の傷を抉るような質問をし、この恋を無理に殺そうとする私はこれで数回の殺心(さつじん)に失敗している。いつまで経っても恋は息をし、ただ、深手を負うだけだ。
「あー、タイプとはちょっと違ェかな……」
あんなにメロメロしておいて、と呆れた顔をする私は内心では両手を上げて喜んでいる。あの子は選ばれない少数派だ、と。
「今まではタイプなんて無かったんだ」
女性は皆、美しくて優しいから、そう言って穏やかな顔で笑うサンジは美しく、そして優しい。女性なんかよりあなたにピッタリよ、と言ったらどんな顔をするのだろうか。
「今はあるの?」
「好きになった子がタイプってやつさ」
「狡い答えね」
「君がタイプなんだけど君はこういう答えは嫌いかい?」
驚きに目を見開いてサンジの顔を見上げれば、サンジの指が私の顎を掬う。
「っ、くく、目がこぼれ落ちちまいそうだよ。レディ」
「あなたが冗談なんて言うから」
「冗談に見えるかい?」
見えると言えたら良かったのにサンジの瞳はただ真誠に好意を伝えていた、私の思い上がりでも私の幻想でも無い。
「……み、見えない」
「これも最近気付いたんだが、本気でオトしたい相手にはメロリンの一つも出来ねェヘタレらしい」
サンジは自身の髪をくしゃりと乱して、ダッセ、と照れ臭そうに笑う。未だに置いてけぼりの私はサンジが話す初聞きの情報に驚くばかりだ、だって私は少数派だ。
「いつも私と違う雰囲気の女の子を見てたのは、」
「君が可愛い顔でこっちを見てくれるから」
おれにとって愛らしいレディは君だけだ、とサンジは口にする。顎に添えられていた手はいつの間にか頬に添えられて、愛おしげに触れてくる。水仕事のせいでカサついた指先は私に傷を付けないようにか、慎重に頬をゆっくりと滑る。
「君のタイプを聞いてもいいかい?」
「……サンジ」
「どうやら君のロマンスを叶えられるのはおれしかいねェらしい」
それにおれのロマンスも君専用だ、とサンジは蕩けそうな甘い笑みを浮かべて私を見つめた。数分前に羨んだ視線は今、私を見ていた。