短編2
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あまり制御が上手くないの、と彼女は申し訳無さそうな顔をして自身の尻尾の先を持ち上げる。今だってサンジがそれを指摘しなければ、頭から生えた猫耳をピコピコと動かしながら尻尾をゆらゆらと楽しげに動かしていた筈だ。彼女は比較的成長してから実を食べたせいで能力の制御が言葉通り上手くない、敵と対峙する際は本人の戦闘センスのお陰で大きな問題を起こすような事は無いが日常的に耳や尻尾などの身体的変化を無意識に発動してしまう事がある。船に乗る前に一人で各地を回っていた際はここまででは無かった、サニーに乗るようになってからこの船は危険では無いと身体が順応してしまったのだろう。野良猫が飼い猫になっちゃったのね、と笑うロビンに撫でられながら彼女はコクンと頷いて自身の尻尾を抱き締めるように丸まった。サンジだって最初は目尻をだらしなく下げて、飼い猫ちゃんになっちゃったのかァ、と彼女がこの一味に馴染んだ事を喜んでいた。だが、色々な事を乗り越えてお付き合いに発展した途端、その頭からピコピコ出てる三角の黒い耳もゆらゆらと揺れる黒い尻尾もサンジの情緒を乱す武器に変わった。だが、能力が猫だと言ったって彼女は人間だ。無闇矢鱈に触って彼女に嫌がられる事態だけは遠慮願いたいとサンジは彼女の耳に伸びそうになる腕を押さえながら今日も無意識に出た彼女の耳と尻尾を指摘する。
悶々とした気持ちを抑えつつ、煙草に火を付ける。平然とした態度で受け答えは出来ているが内に秘めた気持ちは日々、外に漏れ出そうになる。つい、耳に手を伸ばしそうになって慌てて背中に隠せば、その腕に彼女の尻尾が巻き付いた。
「えっと、ナマエちゃん……?」
「……私、最近は制御が上手くなったの」
ロビンがコツを教えてくれて少しずつだけど以前みたいに長い時間隠す事だって出来ると彼女は言う。だが、サンジの前では耳も尻尾も隠れている事の方が少ない。
「サンジって鈍いって言われない?」
彼女は尻尾でサンジの腕を引き寄せると自身の耳にサンジの手を誘導する。そして、巻き付けていた尻尾を離す。
「……おれの都合が良い方に受け取っちまうけど」
「どうぞ」
サンジの顔を見上げて、期待したような眼差しを向ける彼女。サンジは緊張した面持ちで彼女の耳に触れる、猫を撫でる時と同じような手付きで耳を擽れば彼女の口から愛らしい鳴き声が漏れる。彼女は無意識だったのか、驚いたように肩を跳ねさせると自身の口を両手で塞いだ。
「っ、くく、本物の猫みてェだね」
「……は、はじめて出たの」
今まで他人に撫でられる事は沢山あった、ナミやロビン、フランキー、一味以外にも沢山。だが、こんな鳴き声を出した事は無かった。どれだけ気持ちよくても人間らしい振る舞いが出来ていた。なのに、サンジにひと撫でされただけで猫のような甘い声を出し、もっと、もっと、と尻尾を揺らしてしまう。
「おれに触られるの気持ちいい?」
サンジの声が鼓膜を撫でる、わざと吐息を含んだような声に彼女の耳がピクッと反応する。猫耳の下にあるもう一つの耳は白い肌に頬紅を叩いたような赤さだ。
「やっ、待って……っ、声だめ」
いじめ過ぎてはいけないと理解しながらも彼女の反応が愛らしいのと今までの我慢がサンジを悪い方向に進ませる。耳を押さえる彼女の指の隙間から親猫が子猫を毛繕いするように舌先を使って、その黒く尖った耳を撫でる。そして、合間にキスをしてリップ音を彼女に聞こえるように鳴らすサンジ。歯止めが効かなくなったサンジの腕の中で力が抜けてしまった彼女はサンジのシャツを握り締めながら、もう一度甘い声で鳴いた。
「よく出来ました、子猫ちゃん」
顎の下を撫でてくるその手を引っ掻いてやりたいと睨んだ先にあったサンジの顔は捕食者のようにギラついていた、引っ掻く前に己が丸呑みされてしまうようなサンジの目付きに彼女の体が小さく震えるのだった。