短編2
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サンジの朝は体重チェックから始まる、自身の体重をチェックするわけではなく愛しの彼女の体重だ。毎朝、寝惚け眼を擦って欠伸をこぼす彼女を姫抱きにしてグラム単位で彼女の体重を把握するサンジ。昨日よりも一グラム減っていたら、その碧眼からポロポロと涙をこぼし、おれのナマエちゃんが減っちまった、と世界の終わりのような顔をするのだ。
「……おおげさ」
半分、夢の中にいる彼女はそう言って二度寝をする姿勢に入る。サンジのエプロン越しの胸板は硬そうに見えてフワフワの枕のように彼女の頭を受け止める。
一、二キロは誤差だ。そんな事はサンジだってちゃんと理解しているが彼女の事になれば話は別だ。この地球上から彼女が減る事が悲しくて仕方ない、一グラム、たった一グラムでサンジの世界は変わる。
「たっくさん食べてね」
「……パーティーでも開く気かしら」
テーブルの半分以上を埋める料理に彼女は呆れ顔を浮かべる、サンジは見た目以上に食べるが目の前の料理の量は明らかに二人で食べる量では無い。
「晩飯だけど?」
「昨日と明らかに量が違うわ」
「君が減っちまうのを阻止しなきゃ」
減ったのはたったの一グラム、それを阻止する為だけに何キロの料理を作る気だ、と彼女は溜息をつく。
「スレンダーな君が好きって言ってたのは誰かしら?」
ベッドの上で鎖骨に噛み付き、彼女の細い腰を撫でるスケベな手。昨晩だって彼女の上に跨り、その肉付きの良いとは言えない体を散々食い尽くしたくせによく言う。
「柔らけェ君もきっと可愛いんだろうね」
そう言いながら、妻よろしく彼女の皿におかずを盛っていくサンジ。彼女の好きな物を熟知しているサンジは彼女が断れないようにバランスや色取りを考えて皿をいっぱいにしていく。
「おれの世界を君でいっぱいにして」
「こんな場面じゃなかったらキュンときたかもね」
「あれ、今はキュンとこない?」
こない、そう言ってサンジから皿を受け取る彼女。サンジに胃袋を掴まれてから数年が立つがこの量を綺麗に完食出来るかと聞かれたら答えはノーだ。
「そういう性癖でもあるのかしら?」
「君が芽生えさしてくれるなら悪くねェかもね」
「冗談でしょ」
「肥えた君を食っちまおうか」
冗談に聞こえないサンジの一言。勘弁してくれ、と肩を竦める彼女は自身の目の前に置かれた皿を見てサンジの本気に引き攣った笑みをこぼすのだった。