短編2
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笑いのドツボに嵌ったサンジは後ろに仰け反ってみたり、私の肩に顔を埋めてみたり忙しく動きながら豪快な笑い声を上げている。甘い蕩けるような笑みがお似合いのサンジには似つかない笑い方だ。だが、私はこっちの年相応に笑い転げているサンジの方が気に入っている。口に手を当てて女の子のような高い笑い声を上げるサンジ、こちらを巻き込むような大きな笑い声につい釣られてしまう。お互いにおかしな笑い声を上げながらお互いの肩に凭れ掛かる、何に笑っていたかなんて正直どうでも良くて只この状況が何だかおかしくて仕方なかった。
「っ、ふふ、サンジの笑い声やだ」
釣られちゃうから笑わないで、とサンジの身体を軽く押せば少しだけ笑い声を落ち着かせたサンジが酷ェと顔をくしゃくしゃにして笑う。
「君が笑わせるのがいけないんだよ」
「あなたがゲラなだけよ」
くすくすと空気が揺れ、お互いの笑い声が部屋に響く。サンジは戯れつくように私の腰に腕を絡めるとその場に寝転び、肌触りの良いカーペットが私達二人を受け止める。鼻の先がツンとぶつかり、んふ、と変な笑い声を漏らせば先に冷静になったサンジの穏やかな瞳が私を見つめる。
「君は笑い声も可愛い」
むぎゅっと私を抱き枕のように抱えるサンジ、先程まで馬鹿笑いをしていたとは思えない程の切り替えの早さだ。
「おれとは大違い」
「サンジの豪快な笑い方に似てきたって言われたわ」
「へ、誰に?」
ウソップとナミ、と言えばサンジは複雑そうな顔をする。ここでウソップの名前だけを出せばサンジはきっとそれを否定していた筈だ。長っ鼻の耳にはクソでも溜まってんのか、と散々に貶されていた事だろう。
「恋人は似てくるって言うし」
サンジの胸板に擦り寄って甘えるようにそう口にすれば、頭上から蛙が潰れたような音がする。サンジは笑い方に限らずリアクションがオーバーで見ていて面白い。
「それってさ、恋人じゃなくて夫婦じゃねェかな」
少しだけ緊張を乗せた上ずった声が私の言葉の間違いを修正する。
「そのうち、ね」
「……おれ、素直だから期待しちまうけど?」
普通、期待するのは女の私だろう。何百通りの口説き文句を口にしてきたサンジはどんなプロポーズをしてくれるのだろうか、と期待が高まってしまう。ハードルが高いと言われたって口が上手い自身を恨むべきだ。
「期待してるって言ったら?」
「質問返しかい」
私の頭に鼻を擦り付けてスーッと吸い込むサンジ。吸わないで、と身体をずらしてもサンジの腕が私をここに縛り付ける。
「ナマエちゃん吸い」
「猫みたいに言わないで」
「……なぁ、ナマエちゃん」
似ているところを増やして行こうね、とサンジは柔らかな声で私に新しい約束をくれる。この甘い蕩けるような笑みだって結局、私にとっては愛おしいだけだった。