短編2
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リアクションの大きさに差はあれど、あの眉毛が巻いていない彼だって私がよく知っているサンジと同じだった。確かにレディへの対応は控えめで紳士的だ。だが、変わらない所だって確かにある。世間から届く膨大な声はサンジに好意的だ、普段だったら目をハートにしてバレリーナのようにくるくると回りレディから届いた声を聞き逃したりはしないサンジ。グチグチと皮肉は言うが男性からの声だってサンジは何一つ取り零したりはしない、口が悪いだけで根はとても優しいのだ。そんなサンジが別の時空に存在する自身に宛てられた好意的な言葉に耳を塞ぐ。
「……レディだってかっこ悪ィおれよりあっちの野郎の方が好きなんだろ」
そう言い切るサンジの指には指輪が嵌っている、一ヶ月前にはしていなかった筈のゴツい指輪を弄りながら膝を抱えるサンジ。その指輪だってもう一人の自身がしていたから影響を受けたのだろう。
「どっちもサンジじゃない」
「……あっちはだらしねェ顔なんてしねェもん、鼻血も出さねェし行動がスマートでレディから嫌がられる事も無さそうだ」
「サンジとソックリな所だってあるわ」
「例えば……?」
サンジは私の言葉を信じきれないのか不安が隠し切れない顔でこちらを見る。
「話す時にちゃんと目を見てくれる所」
「ただの礼儀だよ」
「……でも、皆が出来る事じゃないわ。いつも目を合わせて話してくれるからこの人は私の話をちゃんと聞いてくれるって安心出来るもの」
どちらのサンジもそうだ、どんな場面でもその碧眼を逸らさずに話をしてくれる。そして、親身になって感情を露わにする。その感情表現がオーバーか控えめか、たったそれだけの違いだ。
「サンジはどの世界でも優しいのね。ふふ、レディは勿論、野郎にも」
「……野郎にあげる優しさはねェ」
照れ隠しの言葉はきっと数時間で嘘になる。ルフィがキッチンに飛び込んでくればサンジはあれやこれやと文句を言いながらつまみ食いをさせて、ウソップの嘘に優しい嘘を重ねてあげるのだ。
「それにね、私はサンジに愛される事に慣れちゃったから今更控えめにされたって物足りなくて沢山おかわりしちゃうわ」
目をハートにして私を見て欲しい、私の手を取ってワルツを踊るようにくるくる回って欲しい。そして、くどいくらいの愛の言葉に溺れさせて欲しい。
「……それでもサンジは私の愛を疑う?」
サンジの正面にしゃがみ込み、そう言って首を傾げればサンジはハッとした顔をして私を抱き締めた。
「悪い、君にそんな顔をさせたかったわけじゃねェんだ」
「ほら、やっぱり優しい」
「……もしかして、謀った?」
えへ、と舌を覗かせて笑えばサンジも眉を下げてくしゃっとした笑みを浮かべる。
「君には敵わねェよ」
ぎゅっと遠慮の無い抱擁を受けながら、今、目の前にいるサンジを抱き締める。スマートではない、でも必死に好きを全身で伝えてくれるサンジが私にとっては全てだった。このサンジがお気に入りなの、と笑う私の目を見てサンジはこう言った
「かっこ悪ィおれでも許してね、レディ」