短編2
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犬系彼女がいるなら恋人のサンジは犬系彼氏だと思う。見えない尻尾を振りながらキャンキャンと私の周りを駆け回り、芸を披露する代わりに私に全力の愛情表現を披露する。放置すればクゥンと鼻を鳴らして、その高くて形の良い鼻を腕に押し付けてくる。構って、構って、好きって言って、と全身でアピールする姿は引くどころか絆されてしまった私には十分の効果がある。長い手足をコンパクトにして私の膝に頭を預けるサンジ。以前だったら膝枕という状況に顔を真っ赤にしていたのに今では涼しい顔をして私の膝に転がっている。もう、膝枕程度じゃドキドキしてくれないの、と意地悪な質問をした私にサンジはこう答えた。
「君の可愛い顔を見れる一番の特等席だって気付いちまったから見逃したくねェの」
また見えない尻尾がフリフリと揺れる。そして、お腹に回された腕に軽く力が入る。そんな事をしなくても私の膝はサンジの物なのにサンジは未だに私が誰かに盗られるんじゃないかと目を光らせている、こういう時のサンジはどちらかと言えば番犬に近い。
「私の番犬」
「愛犬の間違いじゃねェの?」
「ふふ、犬扱いは良いのね」
目の前で揺れる金髪をくしゃりと撫でれば、少しだけ乱れた金色の隙間から両目がこちらを覗く。
「君がご主人様になってくれるなら犬でも猫でも何でもいいよ」
それに犬ならこうやって君は油断してくれるから、そう言ってショートパンツからはみ出た私の太腿に口付けるサンジ。
「おいたが過ぎるわよ」
「親愛のキスだよ、ご主人様」
「口が上手いんだから」
キスも中々上手いけど、どう?なんて甘い誘いを掛けてくるサンジの口は楽しそうに弧を描く。私がイエスの答えを出す前に待ての出来ないサンジは腹筋の力で自身の上半身を起こす。そして、私の頭の後ろに手を回して答えが出かけた私の唇を攫っていくのだ。
「……どう?じゃないわよ」
「キュートな君の顔を見ていたら我慢出来なくて、ごめんね?」
私が本気で怒っていない事を理解しているサンジの見えない尻尾が揺れる。顔の前で両手を合わせたって内心はこの戯れ合いを楽しんでいるのだろう。
「尻尾が揺れてるわよ」
「……あれ、まじで君にはおれが犬に見えてる感じ?」
「さぁね」
素っ気ない返事を返してサンジの胸板に頭を預ければ頭にサンジの顎が乗る。丁度良く力加減された重みが擽ったい。可愛い可愛いご主人様、そう言ってサンジは喉を鳴らして笑う。
「重い」
「愛の重さだよ」
なら、もっと重い筈よ、と口にすればまた見えない尻尾が豪快に揺れた気がした。