短編2
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「今の関係ならどこまで出来る?」
甲板の手摺りに腕を掛けて煙草を蒸すサンジにそう問い掛ける、突然こんな質問を投げ掛けた私にサンジは驚いた様子も見せずにまた煙を吐き出した。
「君が関係に名前を付けたらおれは全てをあげられるよ」
ここで私の逃げ腰の態度に目を瞑ってくれる程、サンジは甘くない。お互い簡単に触れられる位置にいるのに指先すら重ならないもどかしい関係。
「それに君にはまだその覚悟が無いように見えるよ」
そう言ってサンジは煙越しに私を見つめる。そして、手をこちらに伸ばしてくる。つい、目を閉じてしまった私に触る事はせずにすんでのところで手を引っ込めるサンジ。
「ほらね」
「……突然だったから驚いただけ」
「嫌がられるよりはマシさ」
その手が怖いわけではない、その手に縋ってしまうのが怖いのだ。人は誰かを好きになると弱くなる、一人でどう立っていたのか恋をした以前の自分自身を忘れてしまう。
「君がおれに手を伸ばした日が最後だよ。ん、何かって?」
ナマエちゃんの気持ちを見ないフリするのをやめるって言ってんだよ、とサンジは携帯灰皿に短くなった煙草を押し付けた。
「……ま、おれは今の関係を先延ばしにする気はねェよ。君が腹を括る前に我慢出来ずに手を出しちまったらすまねェ」
「へ」
「先に謝っとくよ、せっかちで悪ィね」
サンジはジャケットのポケットに携帯灰皿をしまうと放心したままでいる私の頭をポンポンと撫でて横を通り過ぎる。
「……最悪」
確信犯であるサンジの背中を睨み付ける。そんな鋭い私の視線に気付いたのか、サンジはキッチンのドアに手を掛けてこちらに視線を寄越すと場違いな甘い笑みを浮かべる。
「君が気に入る答えを準備してお待ちしております、レディ♡」