短編2
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「私ってサンジに何か返せてる?」
「毎日うんと愛してもらってるよ」
この言葉は気遣いではなくサンジの本音だろう。だが、はいそうですかと納得出来ない理由が私にはある。理由というよりも自覚だろうか、サンジがくれる愛情や物に私の全てが釣り合っていない自覚だ。愛情を返したいと思っても照れが先行して上手く言葉に出来ない、物はこだわりが強いサンジに何をあげていいか分からず保留を繰り返している。
「それに見返りが欲しくて付き合ってるわけじゃねェし」
君と気持ちが重なったからだろ、と幸せそうに笑うサンジの健気さに涙が出そうになる。
「無欲過ぎない?」
「おれのお宝は君だったから」
そう言って私の髪を指で掬い上げてキスを落とすサンジ、こんなキザな真似をして絵になるのはサンジだからだろう。他の人間が同じ事をしても滑稽なだけだ。
私はサンジの腰に両腕を回して随分と上にあるサンジの顔を見上げる、それだけで何かを察したサンジは私の視線に合わせるように少しだけ屈む。
「今日はね、私がサンジを甘やかすの」
「甘やかされんの?おれ」
満更でもないような、少しだけ慣れないような微妙な表情を浮かべながらサンジは自身の顔を指差す。
「私にもサンジを可愛がらせて」
「……いや、可愛がられても可愛げがねェからつまんねェかもよ?」
屈んでいるせいか普段よりも目線が近い上に軽く上目遣いになっているサンジの表情は十分に可愛げがある。ハの字に下がったくるんとした眉毛も愛嬌があって愛しい。
「私の宝物だって可愛いのよ?」
「……あー、宝物っていうのは?」
「サンジ」
肉の薄い頬に手を添えて簡単なネタばらしをすれば白肌に熱が走る。
「薔薇色ね」
指の腹で頬を擽れば押しに弱いサンジは床にぺたんと座り込んでしまう。そして、自身の両手で薔薇色の肌を隠す。
「ゆ、ゆっくり、もっと慣らしてからの方がいいんじゃねェかな……!」
私は普段のサンジを真似ているだけだ、言葉に嘘は勿論無いがこの行動だって台詞だってサンジに貰って嬉しかったものだ。自身は口を開けば甘い台詞しか吐かないくせに受け身になった途端にサンジは恋愛初心者のような反応をする。
「サンジにされて私は嬉しかったけどサンジは嬉しくない?」
「へ」
「ぎゅってされるのも可愛いって頬を大きな手で包まれるのも好き」
大事にされてるってあなたの温度が教えてくれるから、そう言ってサンジの横にしゃがみ込んで照れ屋な彼の顔を覗き込む。
「……今言うのは反則だよ、レディ」
「甘やかす日だから素直になろうと思って」
一度素直になってしまえば後は楽だ、段々と照れや恥ずかしさが薄れて今言わなきゃという気持ちになる。
「普段から言ってくれていいのに」
「ふふ、たまに言われるとグッとこない?」
「正直やばい」
座り込んだ私の膝にごろんと寝転んだサンジはそう言うと私の頬に手を伸ばす。
「今の温度は?」
「ナマエちゃん大好きって言ってる」
「っ、くく、大正解」
流石ナマエちゃん、とまた私を甘やかそうとするサンジの柔らかな金髪を撫でる。地毛であるそれは船上暮らしをしているとは思えない程に艷やかで美しい。傷み知らずの髪から手を離し、指先はするりと白肌の上で踊る。
「私の温度は?」
「一番安心するよ」
愛情はいつでもあったけェから、そう言ってサンジは私の手の上に自身の手を重ねた。
「たまには甘える日も悪くねェかも」
簡単に私の手を覆い隠してしまうサンジの大きな手が私の手を自身の口元に持っていく。そして、可愛らしいリップ音が鳴り、私の手の熱がまた数度上がった。