短編2
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寝転げるゾロやウソップに挟まれ、私はクシャクシャになった折り紙を何度も折り直す。昔から何故かこういう作業がとてつもなく苦手だ、私の手におさまった折り紙の朝顔は何度も失敗した跡がつき、ヘロヘロと夏の終わりを表しているかのように酷い。鶴は命からがら、手裏剣は刃こぼれまみれ、といった様子で目も当てられない。
「これはこれで味があると思うけど」
「……同情はいらないです」
「っ、くく、そんなんじゃねェよ」
サンジは色鮮やかな正方形の紙に命を宿す。綺麗な薄ピンクの花弁が生き生きと上を向いている、まるで本物の朝顔のようで私のヘロヘロな朝顔とは比べ物にならない。
「私のと全然違う」
「君はこういう遊びは苦手かい?」
「見ての通り不器用なので」
テーブルに咲いたサンジの力作の花を指先でちょんと撫でる。赤、ピンク、黄色、まるでここだけ花壇のようだ。
「でも、サンジが折っているのを見るのは好きよ」
「おれかい?」
「あなたの綺麗な手が何かを生み出す姿が好き、料理もそうだけど見事なものよね」
まるで魔法みたい、と笑い掛ければサンジは指を鳴らし私の目の前に折り紙の花を差し出す。
「どう、魔法みてェ?」
「ふふ、どうやったの?」
「タネを明かしちゃ面白くねェから秘密」
差し出された花の名前は分からないが他のものよりも凝った作りをしている、それだけでこの花が私の為だけに作られたものだと分かってしまう。
「君宛のラブレターだよ」
「えっと、花言葉って事?」
「花言葉に託すには字数がオーバーしちまう」
そう言ってサンジは花をただの正方形の紙に戻していく、私は突然の解体作業に戸惑いを隠せずにいる。だが、崩れた花弁から見慣れた字体が姿を現した。
「へ」
気の抜けた声を出した私にサンジはしたり顔を向ける。
「さっき、ラブレターって言ったろ?」
サンジに手渡された折り目が沢山ついた折り紙の裏面を覗く。愛しのナマエちゃんへ、から始まるその手紙はラブレターにしても甘過ぎる程の内容だ。こんな想いを託された花はきっと荷が重かっただろう、と謎の同情心まで芽生えてくる。
「音読してあげよっか」
「皆が起きちゃうわよ」
「今更過ぎねェか?」
戯れつくようにサンジは私の肩に寄り掛かるとそのラブレターを覗き込みながら一字一句間違えないように口にしていく。勘弁してくれ、とその頭をぽかりと叩いてその止まらない口を手で押さえ付ける。んー、んー、とくぐもった声を上げながら私を見つめる碧眼には言葉にしなくても愛情が浮かんでいる。
「……ほんと、お喋りなんだから」
そのお喋りな瞳に返事を返すように見つめ返せば、ぱちりとハートが飛んでくる。そして、手の平には唇の熱が走る。
「伝え方は色々あるんだぜ、レディ」
驚きから離してしまった手は見事にサンジの手に絡め取られてしまう。周りを起こさないように私の耳にだけ届くラブレターの続きに私がテーブルに突っ伏すまであと数秒、サンジの愛情が止む事は無かった。