短編2
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フリルがあしらわれた真っ白なエプロンを揺らしながら玄関で落ち着き無くソワソワと彼女の帰りを待つサンジ。自身よりも可憐な彼女が着た方がこのエプロンだって嬉しい筈だ、と思いながらも愛用しているのには理由がある。これをくれたのが彼女だからだ。そして、似合うとお墨付きをくれたのも彼女だった。彼女の期待に応えてこそ真の男だ、と腹を括ったサンジは彼女を迎える際はこの新妻のようなフリフリエプロンに袖を通して新婚夫婦のテンプレのような台詞を口にするのが決まりになっている。
「飯にする?お風呂にする?それとも、おれ?」
彼女は毎回この台詞をどうやら楽しみにしているらしい、この台詞にグッと来るのは男だけじゃないとサンジは彼女から学んだ。この三択は彼女のその時の状況によって選ばれるものが違う、クタクタな日は百発百中で飯、ちょっとだけ余裕がある日は風呂、そして一番選ばれる事が多いのはサンジだ。男のロマン通りにエッチに持ち込める時もあれば、サンジをガッチリとホールドして猫吸いのようにサンジを補給する時もある。
「今日はサンジかな」
サンジはその選択に擽ったそうに笑う。「今日は」と言いながら「今日も」がきっと正しい、だって昨日も彼女はサンジを選んだ。顔全体に喜びが溢れているのか、彼女はサンジの顔を見て呆れているのか照れているのか分からない表情を作る。
「顔が煩い」
「君の前だとポーカーフェイスが出来なくなっちまう」
バレバレで恥ずかしいね、と言いながらサンジは自身の頭をくしゃりと掻くと空いた手で彼女の手を引く。リビングまでの短い廊下だってサンジにとったらデートで歩く並木道と変わらないと言ったら、きっと、それこそ呆れられてしまうだろう。サンジは大袈裟だ、と。
リビングにあるソファは彼女のお気に入りだ、二人で家具屋を見に行った際に一目惚れしたシンプルで可愛らしいデザイン。
「おいで」
先にソファに座り込んだサンジはそう言って腕を広げる、家よりもっと深い場所に帰っておいで、と。
「深い場所」
「勿論ここ」
サンジは腕に彼女を招いて、到着、と幼い笑みを浮かべる。
「おれの腕の中が君の帰る場所だよ」
「ふふ、初耳よ」
「今、決めた」
そんなくだらない思いつきを口にすれば彼女はおかしそうに肩を揺らす。そんな彼女にサンジは胸をホッと撫で下ろした、無意識の内に頑張り過ぎてしまう彼女がこうやって肩の力を抜いていられる場所になりたいとサンジは改めて思った。
自身の胸板に頭を預けている彼女の頭を撫でながら、サンジは自身の柔らかくもないゴツゴツとした体を今だけは恨めしく思う。男は癒やされたい時、女の柔らかさを求める。胸に尻に太腿、サンジの体には筋肉がガッシリと付いた胸、薄い尻、そして同じく鍛え抜かれた太腿。癒やされる要素なんて一つも無い、それが無念で情けない。
「サンジって嫁みたいだよね」
「エッ、嫁って嫁?」
「うん、嫁」
可愛いフリフリのエプロンを着て、テンプレの台詞を口にして、母性が溢れたような顔で私を抱っこしてるサンジは誰が見ても嫁だ、と彼女は言う。
「かわいいサンジ」
サンジの金髪に腕を伸ばして彼女はセットが崩れてしまわぬように撫でる。
「かわいいサンジくんがお好み?」
「かわいいは正義ってあなたが言ってたわ」
「そしたら君は正義のヒーローだね」
かわいい、かわいいおれのヒーロー、そう言ってサンジはふやけた笑みを浮かべながら腕の中にいる可愛い存在に口付けた。