短編2
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先に体を起こしていたサンジを抱き枕代わりにして私はもう一度眠りの海に潜ろうとする。だが、そんな私の睡眠を邪魔するようにカーテンの隙間から朝を知らせる陽の光がベッドの上にいる二人を照らし出す。ただでさえ眩しいサンジの金髪に光が反射し、白い壁に色を付ける。
「フッ、ナマエちゃんくすぐってェよ」
擽ったさからサンジは軽く身を攀じる、スラックスを身に纏った下半身とは違って上半身は何も身に纏っていないサンジの白肌を私の髪がするりと撫でた。
「サンジ」
「なぁに」
座っているサンジのお腹に手を回せば普段とは違う違和感に気付く。引き締まった腹筋な事には変わりは無いが、その綺麗な筋の上にほんの少しの肉の気配を感じるのだ。
「やわらかい」
「へ」
思わずそう口にした私の手に導かれるようにサンジは自身のお腹に視線を向けた。ベルトをせずとも安定したスラックス、自身のサイズに合ったオーダーメイドのスーツだと以前に言っていたが数週間前まではもう少し余裕があったような気もする。
ヒュッ、と喉を鳴らしたサンジは顔を真っ青にして私の手から逃げようとする。だが、覚醒してきた私はサンジの体に回していた腕にぎゅっと力を入れてその少しだけ柔らかくなったサンジの体を堪能する。
「……痩せるまで接触禁止に」
「出来るの?」
「ウッ……おれが無理」
そう言ってサンジはベッドに崩れ落ちると顔を両手で覆い、ブツブツと呪文のようにダイエットレシピを口にしてはカロリー計算を爆速でしていく。
「サンジって太るのね」
「……そんなハッキリ言われると心が痛ェんだけどおれも人間だから多少はね」
両手の指の隙間からチラリと私を見るサンジ。コミカルな表情は見慣れているが今のようにシュンと特徴的な眉毛を下げて本気で傷付いている姿はあまり見た事が無かったせいか、つい新鮮で私はそのサンジの肌色を指でふにっと摘む。摘む程の肉では無いがサンジにしたらきっと大問題なのだろう。
「……ナマエちゃん、楽しんでるでしょ?」
「かわいいなぁって」
「かわいいは君ひとりで間に合ってるよ」
だから、いたずらはおしまい、そう言ってサンジは私の手を取り、そのまま自身の腕の中に私を閉じ込めた。
「はーい」
いい子のお返事を返してサンジに甘えるように頭を擦り寄せる。そうすれば、旋毛に優しいキスが落ちてくる。
「人のせいにすんなって言われそうだけどさ、ぜってェ幸せ太りだと思うんだよな」
サンジらしいと言えばサンジらしい答えだ、それにきっとあながち間違いではないのだろう。
「君との幸せで毎日腹一杯だし」
「ふふ、もっとまあるくなっちゃいそうね」
「……まる」
今のサンジの体だって他人から見たらそれはそれは鍛え抜かれた肉体美だ。なのに、私の冗談に顔を真っ青にしている姿は体型を気にする乙女と変わらない。
「どんなサンジでも愛せるわよ、私」
「……まるくなる前には止めて欲しいっつーか、いや、本当に止めてね!?ナマエちゃんそんな小悪魔みてェな顔しても駄目だからね!?」
そんな事を言われたってサンジがどんな見た目をしていても同じように愛せる自信がある。だって、今日まで私はサンジに大切に愛されてきた。余所見なんて出来ない程にこの男に一途に愛を注がれ続けているのにどうやって嫌いになればいいのだろう。
「君の前では王子様でいさせて」
魔法が解けねェように、そう言ってサンジはへにゃりと笑って見せた。きっと、今の姿は今日明日限りだ。この男は極度のカッコつけだから今も頭の中に減量の最短ルートを描き続けているのだろう。