短編2
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怖いもの見たさで毎年心霊番組を見てはもう二度と見ないと宣言するのが私だ。その日から数週間は確かに後悔するのだ、何であんな番組を見たと自分自身を攻めたくなる。だが、秋が来て数個の季節が巡り、また夏が訪れるとその恐怖心を忘れてしまう。朝夕関係無く心霊番組のコマーシャルが流れ、再現VTRを小出しで流されるとどうしても続きが気になって恐怖心よりも興味の方が勝ってしまう。
「……サンジィ」
それで結局こうやって恋人に頼ることになるのだ。お風呂にトイレ、寝室、自宅の大して長くもない廊下をサンジの背中に隠れて進む。ぎゅっとシャツを握れば、世界でいちばん安心出来る「大丈夫だよ」という言葉が掛けられる。
「君を一人にしねェから安心して」
それにおれ達がラブラブ過ぎてこの部屋には霊は入ってこれねェよ、とサンジが言う。
「……本当に?」
「自分が霊だったら絶対ェ恋人同士の部屋なんて居座らねェもん」
彼氏が邪魔で仕方ねェ、とサンジは相変わらずの男嫌いを発揮する。霊は男だけじゃないわよ、と笑えばサンジの指が私の頬を撫でた。
「やっと笑ってくれた」
「へ」
「さっきからずっとこんな顔してたから」
サンジは自身の特徴的な眉を指で下げてシュンと泣きそうな顔をする。どうやら、私は今の今までこんな情けない顔を晒していたらしい。
「……だって、怖いんだもの。偽物って言われても驚いちゃうわ」
心霊番組を見ると暗い部屋や小さな物音にも敏感になる、全ての五感が研ぎ澄まされ日常に潜む異常を探し出そうとするのだ。
「おれと霊どっちが強ェかな」
物理は効かねェだろうし蹴りは無理か、と真面目な顔で頭を悩ませるサンジ。
「おれが守るよ、君の怖いもの全部おれがオロしてあげる」
「……サンジ」
だから安心してね、と撫でられる頭。私はサンジの否定して来ない優しさが大好きだった。霊なんていないとは言わずにこうやってもしもを提示して安心させてくれるサンジ。私はサンジの腰にぎゅっと腕を回してサンジに頭を擦り寄せる。
「甘えん坊かい?」
「サンジが好きってアピールしてるの」
「おれは君の可愛さが怖ェよ」
いつか、おれの心臓を止めちまいそうだ、とサンジは私の背中に腕を回してぎゅっと腕に力を入れた。
「あなたが霊だったら怖くないかもね」
「っ、くく、殺さねェで」
「冗談よ」
「まだ、君を愛し足りねェからあと百年は必要」
冗談と本音、きっとサンジの事だから後者だろう。顔を覗き込んで私の顔中に愛を降らせるサンジ、こんな熱いキスシーンでは霊もきっと居た堪れないだろうと私は先程まで怖がっていた霊に少しだけ同情した。