短編2
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ホーム画面とロック画面に設定された二パターンのサンジ。ホーム画面には友人のナミから言い値で買った真剣な仕事中のサンジの写真、ロック画面にはカメラ目線で可愛らしく微笑むアイドルのようなサンジ。コソコソと画像欄を開けば隠し撮りから自撮り、他撮り、様々なサンジがそこに並んでいる。上から下まで黄色で埋まった画像欄はナミに言わせればストーカーの域に両足を突っ込んでいると言われる始末だ。恋人で無かったら今頃、捕まってたかもしれない。
「んふふ、逮捕」
私の両手首を優しく自身の両手でぎゅっと握るサンジ。
「……っ、かわい」
喉から絞り出したような私の言葉にサンジはくすぐったそうに笑いながら煙草を燻らせている。可愛いのはおれより君じゃないかな、とサンジは人の気も知らずに私の手首を解放して指に煙草を挟むと空いた唇を私の手首にくっつける。ちゅ、っと鳴るリップ音に耳を塞ぎたくなる。
「殺す気?」
「っ、くく、殺す気なんてこれっぽちもねェよ」
私はチョロいので簡単に殺られます、と情けない台詞を吐きながら腕でガードを作る私。だが、ガードの隙間から可愛い顔がこちらを覗く。悪戯っぽく歯を見せて笑う顔はどこか幼い、秘密裏で手に入れた幼少期のサンジの写真と今の顔が重なり胸がぎゅっと潰れそうになる。
「これは?」
「……うっ、試されてる」
サンジは次々に私に攻撃を仕掛ける、攻撃という名の甘い甘いスキンシップ。恋人だったら普通にするようなものばかりだ、手を絡めてみたり顔を近付けてみたり、肩に頭を乗せたり、そんな些細な戯れ。だが、私の腰は少しだけ引けていてサンジの片腕が私を支えていなければ今すぐにでも別室に逃げてしまいそうだ。
「レディに対する昔の自分を見てるみてェ」
「あ、あのメロリーンって目をハートにするやつ!?可愛い!!」
「……あんな情けねェおれも可愛いだなんて君って物好きだよね」
ぽつりとサンジはそんな事を溢す、口を尖らしたり下唇を噛み締めたりどこか落ち着かないサンジの様子に私は首を傾げる。
「どうして?」
「いや、あれに限らずさ……おれって別に可愛いタイプじゃねェだろ?タッパはあるし華奢でもねェ、髭面に煙草って時点でもう可愛いと真逆っつーかさ、君の言う可愛いに見合ってねェんじゃねェかなって……」
世間一般的にルフィとかウソップとかのが可愛い系じゃねェの、とサンジは灰皿に煙草を押し付ける。
「……最初は格好良いって言われたかった筈なのに今は君に可愛がられたくて仕方ねェなんて笑えるよな」
「あのね、サンジが格好良いのは当たり前なの」
サンジの肉の薄い頬を両手で挟む、確かに骨格はしっかりとした男だし髭は可愛いとは程遠い。
「だけど、私は可愛いがいいの」
「?」
「だって、可愛いって文字にすると愛する事が出来るになるから」
可愛いは愛を可にする、と書く。愛してるから私はサンジが可愛く見えるし、一挙一動にダメージを食らう。今だって私の両手ごと自身の頬を包んでナマエちゅわんと目を潤ませているサンジに大ダメージを受けている。
「一番ね、可愛いよ」
サンジの腕の中にしまわれた私はナミの言葉を思い出す。あんた達はお互いとしか付き合えないわよ、と苦笑していたナミに今なら全力で頷ける。私が向ける大きな矢印に同じ大きさの矢印を返してくれるのはきっと目の前のサンジだけだから。