短編2
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前日の晩に朝食の仕込みが終わっていたら、明日は朝までイチャつけます、の合図だ。珍しくサンジが寝坊をしても許される日、そして私がサンジの寝顔を堪能出来る日でもある。カーテンの隙間から溢れた陽の光がサンジの金髪に集まり、天使の輪が浮かび上がる。傷み知らずの柔らかい金髪に手を伸ばし、指を絡めれば自身の軋んだ髪とは真逆の髪が指の間をすり抜ける。サンジのパーツを全て目に焼き付けるように顔を近付ける、くるんと巻いた眉毛を指でなぞり、次はツンと尖った鼻筋を撫でる。そして、顔から指を離して少しだけ開いたサンジの唇を自身の唇で塞いだ。触れ合うだけのキスは普段よりも煙草の味が薄くて少しだけ物足りない。
好き勝手に触り、キスを繰り返す私の後頭部に手が回った。薄く瞳を開けば、眠そうな碧眼と視線が重なる。寝起きのせいか普段以上に目付きが鋭いが機嫌が悪いわけでは無さそうだ。
「……足りねェ」
掠れた低音が鼓膜を撫でる、サンジの寝起きの声に弱い私は片耳に手を添えておかしな鳴き声を上げる。
「っ、くく、どうしたの」
わざと手を退かして、戯れつくようにサンジは私を抱き抱えると耳に顔を近付けてひたすらに甘い掠れた音を鳴らす。咳払いすら色気があって私は生娘のように固まる事しか出来ない。
「おはようのちゅーはしてくれねェの?」
「……さっき、した」
「あれだけじゃ、また寝ちまうかも」
そう言ってサンジは私に体重を掛けながらキスを強請る、もう殆ど覚醒しているというのに悪い男だ。
「なァ、もう一回ぶっちゅうってあっついやつちょーだい」
「品切れです」
「誰だ、買ったやつ」
よいしょ、とサンジに向き合うように体を回転させてその尖った唇を指でツンと押す。
「寝てたサンジくんにあげちゃった」
「起きてるサンジくんには!?」
品切れ、そう言ってサンジの胸板に顔を埋めてくすくすと笑っていれば頭の上にサンジの顎が乗る。
「次の発注は?」
「いつでしょう」
体格の良い男が体を丸めて戯れるように甘える姿は恋人抜きにしても可愛い。そして、それが恋人なら尚更だ。
「残念、今だね」
「あ、もう……っ、ん」
言葉通りにぶっちゅうと奪われた唇は中々離れてはくれず、おはようのちゅーにしては随分と荒っぽい。ふわりと揺れた金髪が私の顔に掛かり、少しだけ擽ったい。
「……腫れてない?」
「腫れるぐれェのやつがお好みかい?」
まだ朝、と枕に顔を埋めてサンジの顔を押し返す。手荒なやり方だがこうでもしないとサンジの甘い罠に引っ掛かり、ベッドから抜け出すのが困難になる。
「んふ、もうしねェから」
「笑ってるじゃん」
「君が可愛くてさ、ニヤけちまうの」
あぁ、いけない。また甘い罠に足を引っ掛けそうになる。そんな幸せそうな笑みを向けられたら私の意地は簡単に緩んで、いくらでも、と唇を差し出してしまう。
「……チョロいって思ってるでしょ」
「おれよりは難儀だよ」
そんなフォローと一緒に降ってきたキスに身を任せれば、朝はあっと言う間に過ぎていく。扉の向こうからサンジを呼ぶルフィの声に私達は視線を合わせて笑うのだった。