短編2
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ナミとロビンに挟まれて尋問を受けるサンジ、内容は想像もしていなかった恋の話。好きなタイプ、理想の告白のシチュエーション、そんな質問が二人の口から交互に出る。
「……えっと、もしかして、おれを巡って争ってる?」
両膝に手を置いて、期待したような眼差しでナミとロビンの顔を交互に見つめるサンジ。夢に見たハーレムがここに、とサンジが鼻の下を伸ばす前にナミの強烈な拳がサンジの頭に入る。テーブルに顔を打ち付けたサンジは赤くなった額を擦りながら顔を上げた。
「なわけないでしょ」
「デスヨネ」
そう言ってへらりと笑うサンジはこの茶番のような尋問の意味にそれとなく気付いていた、この会話には混ざらず、何処かに隠れて話を聞いている彼女の存在にも最初から気付いていた。ハーレムと口にした時に揺れた空気は彼女のものだ、そんな少し抜けている彼女の顔を思い浮かべながらサンジは背筋を伸ばした。
「それでおれのタイプの話だっけ?」
「ふふ、真面目に答える気になったのね」
ロビンが口に手を当て笑う、サンジ特製のドリンクを揺らしながらアイスブルーの瞳を細める。そして、テーブルに頬杖をつき、まるで恋愛相談をし合う女友達のように三人は顔を寄せ合う。
「照れ屋な子とかいいよね」
「あら、中身から?」
「外見の美しさは内面の美しさってよく言うだろ?おれの好きな子はまさにそれなんだ。本人はその美しさに気付いていないようだけど」
勘の鋭い女性陣はサンジがこの尋問の意味を理解している事に気付き、視線を合わせる。そうすればサンジの口がパクパクと音を発さずに何かを伝えようと動き出す。
『協力してくれる?』
無音の協力要請に二人は頷く、二人だってサンジと彼女の曖昧な関係に口を出したくて仕方ないのだ。お互いしか見えていないくせに中々縮まらない距離。お節介を焼いて彼女に問い詰めて見ても、自分にはサンジは勿体無い、と悲しげな笑みを浮かべて彼女は別の話に切り替えようとする。それに我慢出来なくなった二人はサンジを捕まえ、尋問と称してこの行動に出た。
「他には?」
えっとね、そう言ってサンジは何度も指を折り曲げる。両手の指の数じゃ足りない程、好きなタイプではなく彼女の好きな所を上げていくサンジ。両手の指を何周してもサンジの口は止まらず、何処かに隠れている彼女に向けて愛を飛ばす。
「鈍いあの子に届けばいいわね」
「気づいてくれたかな?」
「ふふ、ほら」
ロビンが指差した方向には今にも逃げ出しそうな彼女がいた、潤んだ瞳で樽の後ろからこちらを覗く彼女と視線が重なる。
ほら、行きなさい、とサンジの背中を押すナミ。サンジは礼を告げると急いで女神の楽園から熱い甲板に飛び出す。サンジは逃げる彼女の背中を追い掛ける、逃げ足の早い彼女は船の中をぐるぐると逃げ惑うが男と女では体力が違う。
「えい」
驚いたサンジを横目に彼女は手摺に飛び乗って海にダイブした。この熱い頬を隠すなら水中の方がいい、と茹だった脳が出した指令に従ったのかもしれない。
「ナマエちゃん!?」
サンジは彼女の背中を追うように海に飛び込む、大きな水飛沫が二つ数秒差で上がった。彼女の腰に腕を回して水面から顔を出したサンジはその体をぎゅっと抱き締めて濡れた金髪を彼女の肩に押し付ける。
「っ、もう……本当、心臓が何個あっても足りねェ」
「ごめんなさい……」
つい、熱くて、と自身の頬を押さえる彼女は未だにサンジの顔を見れないでいる。その姿は目眩がしそうな程に可愛らしいがメロリンと意識を失うわけにはいかない、サンジは可愛がりたい気持ちを抑えて彼女の額に自身の額をコツンと当てる。
「君にドキドキさせられるのは好きだよ。でも、こういうドキドキは嫌いだ」
考えていた告白の台詞は海に流れて、考えるよりも先に口から飛び出る。
「君が好きだから」
捻りも無い、この世に溢れた王道の告白台詞。だが、彼女にとっては王道かどうかなんて関係が無かった。誰が自身にその気持ちを向けているか、それだけが大切だった。
「……さっきの全部、私で合ってる?」
「あぁ、だけど一つ付け足さなきゃね」
「?」
「おれを驚かす天才も好きだって」
勿論いい意味でも悪い意味でも、そう言ってサンジは彼女を抱いて船に戻る。この腕から逃げられない事を察した彼女は両手の指よりも多い甘い説教を受けながら、ナミやロビンにSOSを求めるが二人は胸焼けしたような視線を一つ寄越して背を向けるのだった。