短編2
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肩までしっかり掛けられた毛布、昨夜ベッドを共にしたサンジは何処に行ったのか、隣はもぬけの殻だ。煙草とサンジの香水の残り香だけが残ったベッドの上で行為後の怠さを引き摺った腰を擦る、船の風紀を乱さない為に島に下りて行為をするしかない私達は久しぶりの行為にお互いに大人げもなく盛り上がってしまった。羽目を外して朝方まで求め合ってしまった体はきっと床に足を付けば、引き寄せられるように床に崩れてしまうだろう。ぼんやりと靄が掛かった頭を覚醒させるように私は軽く頭を左右に振る、まるで水浴び後の犬のようにフルフルと頭を振っていれば部屋の入り口から聞き慣れた笑い声が聞こえる。
「そんなに振ったら取れちまいそうだ」
ドアに重心を預けていたサンジは組んでいた腕を解くと、ベッドに近付いて私の頭をポンポンと撫でる。
「サンジいたの」
私の薄情な言い草にサンジは怒りもせずに笑うだけだ。
「抱き潰した恋人を置いて船に戻る男に見えるかい?」
「まったく」
「それを聞いて安心したよ」
そう言って、サンジはベッドに腰掛けると私の頬に手を添えておはようのキスをする。チークキス、そして最後に熱烈な唇へのキス。
「腫れてない?」
「可愛い小さい唇が付いてるだけだよ」
「なら、良かった」
何も身に付けていない私の肌をカーテンの隙間からこぼれた光が照らす、サンジは愛おしげに私の剥き出しの肩を唇でなぞる。
「体力の限界よ」
「もう今日はしねェよ、ただの愛情表現さ」
愛情表現、そう言ってサンジは私の肩や首に唇を押し付けて情痕を残す。ちゅ、ちゅ、と可愛らしい幼子のようなリップ音と共に押し付けられる唇は昨晩の獣の口とは別物のように感じる。食われてしまいそうだ、と思っていたキスはロリポップを舐めて溶かすような酷く甘いキスに変わっていた。仕上げと言わんばかりに奪われた唇が少しずつ離れていくのを寂しく思うのは数時間前までの熱を引き摺っているからだろうか。体力の限界と言ったのは私自身なのにもう既にサンジを求めている、堪え性の無さに苦い笑みをこぼした。
「欲しがりさんめ」
だけど、朝飯は大事だから抜いちゃ駄目だよ、と色気の無い台詞をこぼすサンジ。母親か、とツッコんだ私の額を長い指が軽く弾いた。
「残念、君のダーリンだよ。ハニー」
「ハニーより朝食のくせに」
「性欲、睡眠欲と来たら人間、食欲だろ」
サンジは私の耳元に顔を寄せるとニンマリと口角を上げる。
「それにね、飯は飯。デザートはデザート」
「ちなみに今日のシェフの気まぐれデザートはなぁに?」
「気まぐれじゃなくてもいいかい?」
「いいわよ」
「それならベッドに君を盛り付けて食っちまおうか、飯は腹八分目にするつもりだよ」
サンジは未だに素っ裸でいる私に下着を着せながらジョークに混ぜた本音を吐き出す。
「また、脱がすのにいる?」
「プレゼントだって開ける時が一番ワクワクするだろ?」
「はいはい、好きにして」
サンジは私の腕にブラジャーの紐を通していく。そして、しみじみとフロントホックについて語り出すから面白い。
「フロントホック好き?」
「肩に引っ掛かったままなのがエロい」
「エロガキ」
「野郎はみんなエロガキだよ」
ブラを装着するとふんわりとした谷間がブラの上から顔を出す、サンジはその谷間にチュッと軽く唇を触れさせると上目遣いで私を見る。
「鼻血出てねェ?」
「綺麗なままよ」
「なら、良かった」
ベッドに脱ぎ散らかされた自身のシャツを手に取るとサンジは私に着せる、ブカブカのシャツは私が着るとまるでワンピースのようだ。
「大きい」
「華奢過ぎて妖精かと思った」
そう言ってサンジは私を姫抱きにしてキッチンまで続く短い廊下を浮かれた足取りで歩く。
「デザートの前に腹拵えが先だね」
「腹八分目にしてね」
私の分を残しておいて、と私はサンジの胸板に顔を埋めて上から聴こえてくる鼻歌に耳を澄ますのだった。