短編
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
彼女は積極的にサンジの嫌いな所を話す、それもサンジの目の前でだ。おいおい、大丈夫なのか、と焦るウソップを無視し、彼女の口は悪口と言っていいレベルの暴言を口にする。それを地獄耳(レディ限定)でキャッチしたサンジはあろう事か目をハートにして鼻の下を伸ばしている、ドMにも程があるだろうと痛む頭を押さえたウソップがテーブルに崩れた。
「今日もお熱い君の愛が俺を焼き尽くしちまいそうだよ、レディ」
「……おまえなぁ、馬鹿じゃねぇの」
「あ?お前いたの?」
サンジの目には可憐な姿で暴言を吐いている彼女しかどうやら見えていないようだ。楽園を壊すな、と椅子から蹴り落とされたウソップはサンジの理不尽に文句を言いながらラウンジを出て行った。
サンジは椅子に腰を下ろして両手を広げて彼女を迎える。そうすれば、彼女はいそいそとサンジの膝に腰を下ろす。彼女の定位置になってしまった膝はその僅かな重みを乗せる為だけにある、とサンジは言う。その度に彼女は顔を赤くして、重くないかなと不安げにサンジを見上げる。
「羽みてェで心配になる軽さだ」
「口が上手いんだから」
唇に触れた彼女の指の先端にちゅっと口づけを落とすサンジ。
「ほら、キスも上手だろ?」
飽きもせずに自身の唇を貪るようなキスを常日頃してくるサンジのキスはきっと彼女が一番理解している。それが上手な事も、海賊になる前は色々な女性と関係を持っていた事も彼女はサンジのキスとセックスで知ったのだ。
「誰に習ったのかしら」
「今のおれは君に仕立てられているからね、オーダーメイドだよ」
サンジは彼女の独占欲に触れる瞬間が好きだ。過去に関係を持った女性達に対してのヤキモチもそうだが一番好きなのは自身の悪口を広めて周りの人間の好意がサンジに向かないようにしている所だ。間違ったやり方だとは思わない、サンジの色惚けた耳では悪口ですら惚気話のように聞こえるのだ。女好きだってサンジを見ていたら誰でも分かる筈なのに彼女はわざわざ口にしてサンジに色目を使う女に牙を向く、そんな彼女は理解しているのだろうか。自身がサンジの最愛であり、サンジが最後を捧げたいと思っている事に。
サンジの首に腕を回して、彼女は先程の会話を謝罪する。
「……あれは本心じゃないの」
「愛を疑ったりしねェよ」
おれは君の一挙一動に翻弄されてェからいいんだよ、とサンジは言う。彼女の長い髪を梳くように優しく撫でるサンジ。
「ま、そう言っても毎回、君は気にするんだろうけど」
「……なら、言うなって話よね。これでも反省してるのよ」
彼女の声がこれ以上、曇るのは見過ごせない。サンジは彼女の顔を両手で包み込み、こう提案した。
「愚痴ったその日の夜は君の本心を聞かせて」
「本人に惚気ろって……?」
「っ、くく、惚気てくれるんだ?」
あ、と自身の失言に気付いた彼女は視線を逸らすがサンジの両手で固定された顔は丸見えだ。柔らかな頬は薔薇色に染まり、目は泳いでいる。
「サンジくんの好きなところはどこですか?ナマエさん」
「……目付きが悪いところ」
「エッ、もっとあるよね!?他には!?」
「今日一日、後ろの髪がハネてるところ」
サンジは後ろ髪をわしゃっと触るとその部分を見つけたのか、顔を顰める。
「……全部すきだよ、カッコつかねェって思ってる顔もすき」
嫌いの裏にはいつだって好きが隠れている、悪口に聞こえる惚気話はいつだってサンジに対しての確かな愛なのだ。私だけは貴方の全部を認めてる、と周りにマウントを取るように愛を謡っている。