短編
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付き合ってから格段に増えた煙草の本数、今だってプカプカと煙を吐き出して私の不満顔には気付く様子も無い。灰皿の上に山盛りになった煙草を見つめていれば、つい、本音が口からこぼれる。
「……煙草はずるい」
サンジといっぱいちゅー出来て、と隣に座るサンジの肩に体重を預けるようにもたれ掛かる私。
「エッッッッッ」
大袈裟に肩を揺らして、サンジは血走った目で私を見る。そして、私の両肩をグイっと掴んで、顔を近付けて、また顔を背けるように離す。いくじなしめ、とその形の良い鼻を摘めば、眉をハの字にするサンジ。
「次、生まれ変わったら煙草になるからサンジちゅーしようね」
目の前の情けない顔にそう伝えれば、サンジは急に饒舌になり本音を溢れさせる。
「現世は!?ねェ、ナマエちゃん!!君はおれとちゅーしてくれねェの!?煙草より君の柔らかでスウィートな唇を味わいてェの、おれは!!」
来世までお預けなんて意地悪しねェでくれ、とサンジは床にぺしょりと崩れ落ちた。私はそんなサンジの頬をつんつんと突きながら、不貞腐れた表情を脱ぎ捨てた。
「やっと言った」
「……へ」
中々キスをしてくれないサンジに痺れを切らしながらも、私は諦めてはいなかった。良い雰囲気になる度に煙草に火をつけて、不自然な程に動揺するサンジ。普段はエロ本を見てはニヤニヤ、女風呂を覗いてはエッチな妄想を繰り返しているくせに、いざとなるとキスの一つすらまともに出来ないサンジが愛おしくて仕方ないのだ。
「我慢しなくていいのに」
「……い、一回したら歯止めが効かなくなっちまうから」
サンジは膝を抱えるとダンゴムシのように丸くなる、金髪の隙間から覗く耳が真っ赤に染まっている。なら、今はこれだけ、とその耳に口付けを落とせば、サンジは壊れたロボットのような動きで私の方を向く。そして、勢い良く腕で顔を隠すと、いまは、だめ、と小さな声でストップを掛けてくる。
「どうして」
「……君にもうキスしてもらえねェぐらいニヤけてるから勘弁して」
サンジの言葉を突っぱねて、えいっ、と油断しているサンジを押し倒す。体に馴染んだレディへの優しさで私をしっかりと受け止めたサンジは可笑しい顔のまま自分は甲板に頭を打ち付けた。
「だ、大丈夫かい?」
「ふふ、自分の心配でもしてなさい」
普段よりも近い距離でサンジの顔を眺める、整えられた髭を指で遊ばせながら、その上の唇に噛み付くのだった。