短編
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時々、癒やしを求めてアニマルセラピーに頼りたくなる時がある。チョッパーを膝に乗せて日光浴をしてみたり、チョッパーの毛並みに顔を埋めてみたり、チョッパーにとっては大変迷惑な行動に走りたくなる時がある。優しいチョッパーは弱っている私を邪険にしたりせず、心のお医者さんとして好きにさせてくれる。だが、当事者よりもこの行動に不満を漏らす者が一人だけいるのだ。
「かさばる」
膝に頭を乗せて、私のお腹に頭を埋めるサンジをどうにか退かそうとするが腰に回された腕がそれを許してくれない。大きな身体を出来るだけ小さくしてサンジは丸まっている、だが、丸めたところでサンジにチョッパーのような愛くるしさはない。駄々をこねる成人男性をあやす趣味もアニマルプレイに走る趣味も持っていない私は膝の上に乗っかる金髪をジト目で見つめる。
「サンジ」
「……おれだって可愛いし」
「はいはい、可愛い、可愛い」
返事が雑、とむすくれる顔は髭を隠せば可愛い気もしてくる。右手で髭を隠せば、途端に幼く見えるから不思議だ。
「髭が邪魔ね」
「……前は眉毛が邪魔って言った」
「今は好きか嫌いかって聞かれたら多分好きよ」
多分なんて取ってつけたような言い方で誤魔化してもサンジはきっと言葉の裏に隠れた本音に気付いている。
「君のそれは素直に受け取らない方が当たりなんだ」
レディは素直じゃないから、そう言ってサンジは私の手に指を絡ませた。細長い指が私の手の甲にハートマークを描いたり、文字を書いていくのを見つめる。
「すき」
「おっ、正解」
「違くて、サンジが」
馴れ馴れしくて変な眉毛で、おれだって可愛いだろうがと本気でチョッパーが引いてしまうくらい泣くところも軽そうな口で真面目な愛を語るところもこれ以上、誤魔化せない程に好きになっている。こうやって構ってもらえると無い尻尾を振って、サンジの毛穴一つない白肌にキスでもしてしまいそうになる。
「これは素直に受け取っても?」
「ご自由に」
紳士のフリをした駄々っ子の前髪を指で退かして、その邪魔だった筈の眉毛に口付ける。眉毛の可動範囲はどうなっているのか、サンジの百面相に合わせて賑やかに動く。
「ふふ、うるさいなぁ」
「あー、もう不意打ちずりィ」
キス顔、目に焼き付けてねェよ、と人生の終わりのような顔をしてサンジは馬鹿な事を口にする。
「もうしない」
「そりゃねェって、ナマエちゃん」
ワンモア、ワンモアと人差し指を立てて強請るサンジ。サンジの望み通りにその唇にキスを落として、膝からサンジを退かすと私は勢いよくその場から逃げ出した。
「「好き過ぎてやばい」」
背後から聞こえた声と自身の口からこぼれた声が重なった瞬間、私の頬は真っ赤に染まった。