短編
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滅多な事では怒らないサンジと売り言葉に買い言葉で喧嘩になった、ナマエちゃんなんてもう知らない、と頬を膨らましたサンジはどう見ても喧嘩には向いてない。ゾロと喧嘩する時のようにメンチの一つでも切ってくれたら、こっちだって捨て台詞を吐いて、この場を去れるのにそんな子供騙しのような台詞じゃ怒りを継続する事が出来ない。
顔を逸してくすっと笑みをこぼせば、目の前の膨れ面がまた面白くなさそうに私を睨む。私よりも頭一つ分も大きいのに小動物の威嚇のようで微笑ましい、先程まで同じように声を荒げていた筈なのにもう私の怒りは収まっていた。
「ごめんって」
「……ナマエちゃん、反省してねェもん」
「してる、してる」
ほら、してない、とサンジはまたぐるぐるの眉毛を吊り上げて、ふん、とそっぽを向く。
「かわいいなぁ」
場違いにヘラヘラと笑う私の頬を両手でむにゅりと押し潰すサンジ。押し潰す手は随分と優しい、喧嘩をしていたって加減してしまうサンジが愛しい。
「ぶす?」
「かわいくて腹立つ」
「ふへへ」
ぶすくれた顔でそう言うサンジに私は変な笑い声を上げてしまう。サンジは私の頬の拘束を取ると、自身の顔を両手で覆ってしゃがみこんでしまう。
「どれだけ喧嘩してたってクソ可愛いに決まってんだろ……怒れねェってこんなの、だって、君なんだもん……悔しいぐれェに惚れてんの、おれ……うぅ、秒で謝りてェ……でも、怒んねェと君の為になんねェし……」
膝に顔を埋めるようにして、しゃがみこんでいるサンジの目の前に同じ様にしゃがみこむ。そして、その項垂れる金髪をぽんぽんと撫でる。
「サンジって喧嘩向いてないよね」
相手の毒気抜いちゃうんだもん、そう言ってくすくすと笑う私にサンジは眉をハの字にして情けない顔をする。
「……だって、レディは笑ってて欲しいもん。怒ってる顔だって勿論、ゾクゾクしちまうくらいに麗しいけど」
「あはは、サンジらしい」
お節介で過保護で優しいサンジ、たまにそのお節介が気に入らなくて余計な事を言ってしまう私。今日だって元々はサンジのお節介に私が食って掛かったのが原因だった、サンジは喧嘩をするつもりなんて無かったのに私が言い過ぎたからこんな事になっている。
「……サンジのお節介はさ、恋人として?それとも、子供扱い?」
「お節介な恋人として」
君を心配してるだけ、そう言ってサンジは脚を崩して甲板に胡座をかく。
「なら、ちゃんと反省する」
「ん、そうして。おれが心配で死なねェように」
同じ様に脚を崩して、サンジの肩に寄り掛かる。サンジの顔を見上げれば、準備していたかのように顔中に仲直りのキスが降ってくる。
「また、喧嘩しようよ」
「おれはしたくねェんだけど」
「だって、仲直りのキスって素敵じゃない?」
サンジは夢見がちな私の唇をちゅっと奪うと、そういう所だよ、と眉をハの字にして笑うのだった。