短編
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酔った勢いでサンジに告白した。最初から酒の力を借りなきゃ告白なんて出来そうになかった私は狙ってしこたま飲んだ、サンジの制止する声にヘラヘラと笑いながら、そういうところが、あんなところが、と馬鹿の一つ覚えのように好意を伝えた。その結果、熱烈な告白をした。思い出すだけで顔から火が出そうな程だ、二日酔いとは別の頭痛が自身を襲う。出会いから現在まで決して短くない期間、自身の内側に閉じ込めてきた好意。それを気前よく大放出して私は寝落ちた、目覚めた時には女部屋のベッドで頭を抱えた。何もかも忘れていれば良かったのに、はっきりと覚えているから嫌になる。
女部屋を出た私はそっとキッチンに向かう、忍びのように足音を殺してサンジがいるであろうキッチンの扉を開く。何も覚えていないフリをしよう、と心に決めて普段通りに声を掛ける。こちらを振り向いたサンジの顔は真顔だった、美形の真顔は怖いんだぞ、と怯みそうになる自身の足を何とか進めて、サンジの手からコップをひったくり、蛇口をひねる。
「昨日、女部屋まで運んでくれてありがとう」
「あァ」
背中に冷や汗を垂らしながら、サンジの方に視線を向ける。だが、その表情は何を考えているか分からない。
「覚えてねェの?」
「なぁんにも、昨日は飲み過ぎちゃった」
知らないフリを続ける私にサンジは覚悟を決めたような顔をして、私にニッコリと微笑む。何だか、背筋がピンと伸びるような見えない圧力を感じる。
「好きだ、って」
「誰が?」
「君がおれを」
サンジは私を指差して、次に自身を指差す。そして、淡々と私が大放出させた告白の数々を口にしていく。
「好き好きって擦り寄ってきたかと思えば、いきなり体のパーツを一つずつ褒めちぎってきて、足技で蹴ってほしい、一生おれの料理しか食べたくねェ、ぐるぐるしてる眉毛が可愛い、女の子にデレデレしてる姿が一番キュンってするけど知らない女の子にしてると泣きそうになるって君が言ったんだよ?」
ふーん、へー、と興味のないフリをして相槌を打つ。何で全部、暗記してるの、と内心は大騒ぎだがここでバレるにはいかず、まだ私は知らないフリを続ける。
サンジは私の頬に両手を添えて、包み込むようにすると蕩けてしまいそうな微笑みを浮かべる。こうやってキスされてェって、そう言ってサンジは次々と私の告白を再現していく。一字一句とまではいかないが、内容は忠実だ。昨日、暴走した通りに全てが進む。顔が熱くて、まともにサンジの顔を見れない。
「……し、知らないもん」
こんなに情けない声じゃ答えは一択だ、私は覚えています、と言っているようなものだ。
「記憶がなくて困っているナマエちゃんに新しい記憶でもあげちまおうかなァ」
「へ」
「忘れたフリしちまうところも可愛い、酔っ払った勢いで告白しちゃうところも愛しくて困っちまうなァ♡長い睫毛もお人形さんみてェで目が離せねェし、セクシーなホクロも色っぽい、だが、ナマエちゃんの好きな所は日に日に増えていくから時間が足りなくて困っちまう、今だって驚いて口が、んん」
サンジの好き勝手に動く口を両手で塞げば、サンジは片目だけでふにゃりと笑ってみせた。そして私の手のひらをぺろりと舐めて、口元を解放させる。
驚きで目を丸くする私の頭をグイっと自身の方に引き寄せて、サンジは私の唇にちゅっと自身の唇を合わせた。
「昨日もしたんだけど、やっぱり覚えてねェ?」
「……覚えてる」
私は早々に陥落して、ずっと夢見ていたサンジの腕の中に勢い良く飛び込んだ。そうすれば、昨日と同じタイミングでサンジが嬉しそうに笑った。