短編
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サンジの長い指が私の髪を掬い取る、癖のある髪は湿気によって変幻自在に飛び跳ねて言う事を聞かない。
「嫌になっちゃう」
顔を顰めながら癖毛と格闘する私を椅子にエスコートするサンジ、そして、その腕にはドライヤーや櫛やらが準備万端とでも言うようにしっかりと握られている。
「ありがと」
「ん、おれがやりたいだけだから気にしないで」
私の後ろに回り込んでヘアセットを開始したサンジに何の気なしに質問をする。
「サンジって私の身嗜みに厳しいよね、少しのハネすら直しに来てくれるじゃん」
身嗜みを疎かにしているわけではないが、少しの隙すら目敏く見つけてこうやってサンジの手で直されてしまうのだ。
「恋人のおめかしのお手伝いをしてるだけだよ」
「楽しい?」
「あァ、勿論。そもそも、身嗜みを整えるって事は外向けになるって事だからね」
「うん?」
サンジの言っている外向けとはどういう意味なのだろう、私はあまり理解していない頭でとりあえず同意してみせる。
「君の困った癖毛も、君の少しだけ足りない眉毛も、だるだるの部屋着でこうやっておれに髪を弄くり回されてる姿もさ、おれだけの特権みてェだから」
みんなには秘密、そう言ってサンジは最後の仕上げと言わんばかりに自身が使っているヘアオイルを私の髪に揉み込む。
「ま、外向けの君も独り占めしてェけど」
はい、終わり、と短く告げられた言葉を合図にくるりとサンジの方を振り返る。
座っている私と目を合わせるようにサンジは少しだけ腰を屈めている。草臥れたスウェット、ぴょこぴょこと跳ねた金髪、私が知っている私向きのサンジの姿。
「確かに」
「ん?」
「誰にも言いたくないわね」
こんなに油断した姿、そう言って私はサンジに小さくキスを落とすのだった。