短編
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いーれて、と語尾にハートマークをつけてサンジのジャケットの中に潜り込む。丁度、耳の近くでドクンドクンと派手なビートを鳴らすサンジの心臓に思わず笑みがこぼれた。
「これはおれだけだよね?ほ、他の野郎にも?」
上擦ったような声でサンジはそう言うと、まァ、あいつらはジャケットなんか着ねェし、とブツブツと自己完結してしまう。私はその嫉妬心が嬉しくて、お手本のような台詞を口にしながら、サンジのジャケットから顔だけを出す。
「サンジだからだよ?」
女の武器は涙以外にも沢山ある、狡い台詞だって武器の一つだ。今までだったら情報を得る為だけのハニートラップの一部であったが、サンジに対しては本命中の本命な為、少し照れ臭い。
「おれだからだめなの!!」
突然の大声にビクっと肩を揺らして、サンジの顔を覗き込めば、その顔は真っ赤に染まっている。そして胸のビートもヒートアップしたように加速して、私の鼓膜を揺らしている。
「何で?」
「おれは!君が好きなの!だから、軽率にスキンシップを許しちゃいけねェ!他のクソ野郎はもっと許しちゃいけねェけど、おれも野郎だからさ……」
期待しちまう、と言ってサンジは私から離れる。体を包んでいたサンジのジャケットはするりと肩を撫でて、私からゆっくりと離れていく。
「ナマエちゃんだって興味のねェ男に期待されたくねェだろ?」
サンジは眉をハの字にして困ったように笑う、ここで言葉を濁したり、拒絶したりすればサンジは一生好意を伝えては来ないだろう。
「……だから、って言った。サンジだからこういう事するんだよ」
私はサンジのジャケットをグイっと引っ張ると、先程と同じようにジャケットの中にお邪魔する。そして、サンジの引き締まった体に頭をグリグリと押し付けながら悪態をつく。
「鈍感まゆげ」
好きなら好きって言えよ、と可愛くない暴言を吐く私を信じられないような目で見つめるサンジ。その表情はどっちの表情なのか、私には見当も付かない。両思いに驚いているのか信用出来ないのか、答えは目の前のサンジにしか分からない。
「……おれ、期待するよ?」
「期待していいよ」
「後から嘘って言われたら甲板で大の字になって号泣しちまう自信がある」
きっと冗談ではないのだろう、サンジの瞳はキョロキョロと落ち着かない様子で私の真意を探っている。
「好きな人に嘘はつかない」
「……ナマエちゃんの口から好きな人」
サンジは自分自身を指差すと、好きな人はおれ、と夢見心地のような表情を見せる。
「こんな幸せあっていいのか……?いや、いい。おれが許す」
ブツブツと独り言を口にしながら顔色を赤くしたり真っ青にしたり忙しそうなサンジ。許すも何も最初からオーケーサインは出ている、私はサンジを拒む気なんて無い。拒む気というよりも拒める気がしない、何をされても喜んでしまう自信がある。
「こういう事をしても許される関係になりてェ」
サンジの長い腕がジャケットごと私を迎え入れる、そして覚悟の決まったような声色で私に幸運を運んだ。期待しちまったから撤回は無しで、と。