短編
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「今日の君は意地悪だね」
そんな言葉とは裏腹にサンジは愉しげに私が提案したお遊びに二つ返事で了承した。お遊びの内容は至って簡単だ、タイムリミットまでに私のどこの部位に香水をつけたかを当てればいいだけだ。
「香水はあなたがキスして欲しいところにつけなさい、って言葉があるのよ」
私は口元に怪しい笑みを浮かべて、挑戦的な瞳でサンジを見つめる。
「手首かしら、それとも、首筋?」
惑わすような口振りでサンジの思考に揺さぶりを掛けていれば、サンジはゴクリと喉を鳴らす。形の良い喉仏をするりと撫でれば、サンジは私の指を退かしてベッドに縫い付ける。
「ルール違反は駄目だよ、レディ」
「あら、違反なんてしてないわ」
「色気に当てられちまう」
サンジはそう言うと時々掛けている黒縁の伊達眼鏡をスッと外してベッドサイドに置く。
「似合ってたのに」
「キスするには邪魔だから」
私のお腹に指を這わすサンジ、愛撫するような手付きが擽ったくて、つい、身を捩る。感知犬のように私の肌に鼻をくっつけて、クンクンと鼻を鳴らすサンジが可愛らしくて、空いた手でサンジの金髪をゆっくりと撫でる。
サンジは悪戯に私の肌に吸い付いた、躾のなっていないサンジの態度に私はわざとストップを掛ける。
「そこは正解じゃないわ」
ツン、と尖った唇を人差し指で軽く押し返す。
「当てるまでお預け」
私を見下ろすサンジの頬に赤みが差す、そんなサンジの心情を弄ぶように私は、早くここに、と言葉を続ける。
「ヒントはいつもあって、今日はないもの」
なぞなぞのような私のヒントにサンジは数秒、頭を悩ます。だが、その答えは案外近くに転がっていた。サンジは自身の頬を好き勝手に撫でたり、こねくり回したりしている私の左手をゆっくりと引き寄せると、ガラ空きの薬指に口付けた。
「指輪はお留守番かい?」
「あなたを傷付けないようによ、紳士的でしょ」
それに擽ったそうに、愛だね、と答えるサンジ。そんな当たり前のことを言うサンジに私は一つ溜め息をこぼすと、サンジには教え甲斐があるわ、とその口を塞ぐ。
「んっ……!」
「サンジは教えられるなら口か体、どっちが好みかしら?」
私の大胆な質問に、はひ、と可愛らしい反応をするサンジ。どっち、と答えを示す前にその男にしては少しだけ厚めのセクシーな唇を再度、奪う。未だにキスだけでへにゃへにゃになってしまうサンジは息継ぎのタイミングを逃して、私の胸をトントンと叩いて、ストップを掛けようとする。私は一度だけ唇を離し、空いた手でサンジの視界を塞ぐ。
「こりゃ、何のプレイだ」
「キスは目を閉じるのがマナーよ」
サンジの声には期待の色が浮かんでいるが、残念ながらそうでは無い。
「テーブルマナーは知っているくせにベッドマナーはまだまだね」
「……君にご指導されてェなァ♡」
「お馬鹿」
私は視界を塞いだまま、キスをする。暗がりの中で聞こえるのは私とサンジのキスの応酬の音だけだ。甘やかなリップ音は未だ鳴り止まない、そして、サンジの騒がしく音を立てる鼓動もまだまだ鳴り響いているのだった。