短編
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※ヤンデレ注意
「ま、需要と供給が合っちゃったし仕方ない」
早々に現実を受け入れてしまった私にサンジは戸惑った表情を浮かべた、本当にそれでいいのか、と何度も私に確認を取るサンジの両頬に手を添えて、ぱちん、と気合を入れるように叩いた。
「やると思ってたし」
私の恋人は優しくて、重い。小さな頃に受けた心の傷が上手く塞がらなかったサンジは愛情の向け方が少しだけ下手だった。束縛が激しくて、私の何もかもを知りたがったサンジは、私の起きた時間、三食何を食べたか、どのくらいの時間に帰宅したか、誰と話したか、その話した人間との関係性、合間の全てを事細かく私に報告させた。そして、報告する度に、君はいい子だね、今日もよく出来ました、と赤子を褒めるように言葉を尽してくれる。そのお陰か私の自己肯定感は無駄に高い、私の一挙一動にサンジのメンタルが懸っているからだ。そんなメンタル弱々サンジと数年も付き合っていれば、この行動も妙に納得出来てしまう。
「何もしなくていい、居るだけでいいから、家事も君のお世話もおれがする。勿論お金の心配もいらないから、ね?……だから、おれといて」
いてくれるだけで安心するサンジと何もしたくない私、監禁する側とされる側。お互いの需要と供給が合ってしまったのだ、私にとっては幸せな同棲生活と何も変わりない。
「本当に何もしなくていいの……?」
「えっと、恋人っぽい事はしてェです」
監禁を提案した奴とは思えない程に可愛い事を口走るサンジに私は頬をだらしなく緩ませ、いっぱい、いちゃいちゃしよーね、とサンジの首に腕を回した。
「嫌じゃないの……?」
「ま、需要と供給が合っちゃったし仕方ない」
こんなやり取りから始まった監禁生活は今までの生活よりも快適で逃げる気にもならない、サンジが申し訳無さそうに付けてくれた足枷も私の足首を傷付けないような造りになっており只のアクセサリーのようだ。
そこら中に仕掛けられた盗聴器もカメラも愛情の一部なのだ、愛でる手段とでも言えばいいのか、勿論、この間違った方法を肯定する気は無い。世間的には私達は異常なのだ、だが、お互いの幸せを外野に否定させる気も無ければ、バラしてやろうとも思わない。
「サンジは今の関係が間違ってると思う?」
「……ん?ナマエちゃんは間違ってるって言うの?異常だって?」
私は言葉選びを間違ったかもしれない、目の前のサンジの碧が濁ったように影を帯び、私を静かに見つめる。ねェ、と続いた言葉は固くて低い。
「おれはやっぱりおかしい?恋人としても出来損ないかい?」
「違うの、ただサンジは優しいから私のお世話とか大変なのに言えないんじゃないかなぁ、って心配になって……!」
サンジの大きな手が無防備に晒されてる私の首を優しく掴んだ、苦しくも殺意もない、ただ触れているだけの手。急所を抑えられている私よりも抑えてるサンジの方が苦しそうだ。私はサンジの震える手に自身の手を置いて、大丈夫だよ、怖くない、怖くない、と落ち着かせるように声を掛ける。
「……っ、ごめんね、ナマエちゃん苦しくねェ?」
「サンジの手は私を傷付けないから大丈夫」
下がった特徴的な眉、不安げに洪水を起こす瞳、数秒前のサンジとは別人のようだ。その、どちらもサンジの本質であり私が愛しているサンジなのだ。間違った愛、正しい愛、誰がそれを決める?何を見て判断するのだろうか?
「サンジは間違ってないよ」
誰がサンジに心無い言葉を掛けようが、私は、私だけは否定しない。これが私達の正解だよ、と嘘を真実に変えて笑うのだ。