短編
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観光地としても有名なこの島は飲食店が並んで船長の気を引くには最高の島だった、そして、気付いた時には私の隣には誰もおらず、キョロキョロと辺りを見渡しても船長らしき人間は見つからない。
「だから、私にはお目付け役なんて出来ないって言ったのよ……」
野生児のような船長のお目付け役なんて、きっと、赤ん坊の世話よりも難しい。溜息を吐きながら来た道をトボトボと歩いていれば、見知った金髪が店から出て来た。あちらは、まだ私に気付いていないのかポケットに手を突っ込み、こちらに背中を向けて歩き出した。
私は足音を消して、サンジの後ろを着いていく。こう見えて、隠密行動は得意なのだ。無防備に背中を晒すサンジにニマニマと笑いそうになりながら、その丸まった猫背をつんと指で突けば、サンジはくるりと振り返り、私を見た。途端にサンジの身体はへにゃへにゃとスライムのように地面に崩れ落ちて行く。
「なんでっ!そんなに可愛らしい悪戯が思い浮かぶんだい!?」
子供じみた悪戯をしただけで、君は天才だ、と褒め言葉をくれるサンジ。まるで、滝のような勢いで降り掛かってくる褒め言葉に私は肩を揺らして笑ってしまう。
「サンジを見つけたから、ついね」
「おれ?エッ、おれだったから……?」
なんて光栄なんだッ、と神に感謝するように天に両手を伸ばすサンジ。ただのつまらない道端を教会に変えてしまうサンジはやっぱり面白い。
「おれは今日ほどおれに生まれた事を感謝した事はねェよ」
私はサンジの片腕に自身の腕を絡めると甘えるように頭を擦り寄せた。
「ふふ、大袈裟な人」
「あ、本気にしてねェな?ナマエちゃん」
おれはいつでも本気だよ、そう言ってサンジは空いた手で私の頭をぽんぽんと撫でる。
「それで、君はここで何を?」
「素敵な金髪が見えたからナンパしに来たの」
「光栄だよ、レディ」
サンジは軽口を叩きながらゆっくりと歩き出す、長い脚は器用に私の歩調を真似しながら歩く。そのお陰で私は置いて行かれる事もなく、サンジと楽しくお喋り出来ている。
「お誘いだと思ってもいいかな?」
「えぇ、いいわよ」
お互いの畏まった言い方にくすくすと笑みをこぼせば、サンジもつられるように笑った。
「俺以外の金髪の野郎にはしちゃ駄目だからね」
「サンジだったからナンパしたの」
「君は男を見る目があるね」
普段から素敵な恋人を見てるせいかしら、とサンジのネクタイを自身の方に引き寄せれば、もっと見ていいよ、とサンジは私の額に口付ける。
「ふふ、こんなに近かったら見えないわ」
サンジは戯れつくようにキスの雨を降らしながら、他の野郎なんて目に入らないように、と私の視界をサンジ一色で染め上げる、視界を埋める黄色がまた私を魅了する。