短編
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サンジはサプライズの天才だ、そしてサプライズを見破るのも上手い。きっと、普段からクルー達をよく見ているからだろう。何が好きで、何が嫌いで、どんな事に嬉しくなるか、サンジは食事の事からそれ以外までクルーの事を誰よりも理解していると私は思う。そんなサンジのサプライズに顔色一つ変えず、無言でプレゼントの花を受け取る私の面白みの無さにも気付いている筈なのにサンジは時々、サプライズだと言ってカラフルな花を束にして渡してくる。花ならロビンにでも渡せばいいのに、と素っ気なく言葉を返した私にサンジは柔らかな笑みを向けてくる。
「君が浮かんだから」
その時は意味が分からなかったが、それを理解する日は案外すぐに来た。たまたま上陸した島で、タンポポを見つけたのだ。今までだったら通り過ぎていた筈の黄色にサンジを重ねた、そして、これを渡したらサンジはまた柔らかく笑ってくれるのだろうか、と自分らしくない考えが頭に浮かんだ。
無造作に握られたタンポポはサンジがくれた花束とは大違いだ、最低限のマナーで土は払い落としたが包装もしていない剥き出しのそれは見窄らしくてプレゼントとは言えない。でも、サンジの頭に似た黄色はやっぱり綺麗でふわふわの花弁は潮風に揺れるサンジの髪のようで、私は捨てる事が出来そうに無かった。
誰にも会わないように船に戻った。私は背中に剥き出しのタンポポを持ち、サンジの城であるキッチンに足音も立てずに入る。まるで侵入者のような私にサンジは驚きもせずに、おかえり、と笑った。
「今回の島はどうだった?」
「フルーツが有名だって聞いた」
それは楽しみだ、と私の素っ気ない言葉にも屈託の無い笑みを向けるサンジ。そんなサンジにゆっくりと歩み寄ると、手、とだけ言って私は黙り込む。
「手?」
「……手を出して」
「君の頼みならいくらでも、はい、どーぞ」
目の前に差し出されたサンジの両手にくたりと力を失くしたタンポポを置く。
「サンジが浮かんだ、から」
綺麗じゃなくてごめん、握り過ぎた、と忙しなく言い訳を口にする私の顔を見つめるサンジ。
「……サプライズってこういう事、言うんでしょ」
「何でしようと思ったの?」
「サンジに笑って欲しかった」
そう伝えれば、サンジは柔らかく目尻を下げる。甘い顔立ちが余計に蕩けてしまいそうだ。
「君からのプレゼントだって自慢していいかい?」
サンジはそう口にすると一本のタンポポを耳に掛けて、髪飾りのようにする。透き通るような金髪に紛れた黄色は似ているようで、やっぱり少しだけ違う。
「サンジの金髪の方が綺麗なのは秘密にして」
「エッ、これって口説かれてる!?」
その、だらしない蕩けきった顔に私はもう一つ、サプライズを贈りたくなった。
「私、サンジのこと、ずっと好きだよ」