短編
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サンジは駄目女製造機だと思う、いや、駄目私製造機だろうか。初対面の時から甘々であったが、付き合ってからはもうデロデロに甘い。四六時中、愛を向けられている今の状況は少しだけ落ち着かない。他のクルーの前でのスキンシップを禁じている分、二人っきりになった途端、サンジは私を砂糖の海に突き落とす。サンジは私の発言を冗談だと思ったのか、くすくすと笑みをこぼすと私の首に腕を絡めて、ちゅう、と可愛らしい音を立てながら唇に触れた。
「ほら、やっぱり」
「だめ?」
「嫌じゃないから嫌」
サンジのシャツから覗く鎖骨にぐりぐりと頭を押し付けると、くすぐったそうに逃げられてしまう。
「マーキングしてたのに」
「もう君のだよ」
どれだけ、サンジに駄目にされようが、四六時中、愛を向けられようが未だに満足出来ない私はきっと誰よりも欲張りで海賊らしい。
「だけど、マーキングは大事よ」
サンジは私と付き合ってからレディに対するメロリンが落ち着いた、島に下りても彼方此方のレディをナンパしなくなった、それに、珍しい型である血液を無駄にしなくなった。これに関してはチョッパーが私よりも嬉しそうにサンジに抱き着いていた。
元々の造形が美しいサンジから女好きを取ったら、モテはじめるのなんて一目瞭然だ。人の物ほど輝いて見えると言うのは本当らしい、隣に私がいてもお構い無しにレディに囲まれるようになったのだ。そんな些細な事で不機嫌になった私は道の真ん中で立ち止まりサンジを困らせた。ん、と腕を伸ばして、子供のように歩きたくないと我儘を言った私にサンジは声を荒らげたりせずに、私の身体をぎゅっと抱き締めて、そのまま抱き上げた。そこから、うんともすんとも言わなくなった私をサンジは嫌な顔一つせずにサニーまで運んだ。そして、この時間まで厄介な私に捕まり、私のご機嫌取りに付き合わさせれている。
「可哀想なサンジ」
「エッ、おれって可哀想なの?」
「……だって、嫉妬深い彼女に縛られて可哀想じゃない。大好きな女の子に声だって掛けられないでしょ」
ネガティブホロウを食らった時のように弱音がポロポロと口からこぼれる。
「大好きな女の子とお喋り出来て幸せなんだけどなァ」
「ナミとロビンは話が違うわ」
「いや、君だけど」
おれの一番大好きな女の子、とサンジは私を指差して蕩けるような笑みを浮かべる。
「ぴ」
「っ、くく、ぴ、って何だい?もう、ナマエちゃんは可愛いなァ」
サンジの瞳があまりにも雄弁に好きを語っていて直視出来ない。私の口からは鳴き声のような変な声が漏れて、恥ずかしくて顔すら上げられない。
顔を両手で覆って、仰け反る私の背にサンジの手が差し込まれて身体を支えられる。危ないよ、と言われたってサンジの横にいて危ないと思った事なんてない、この世で一番安全な場所でしょ、と私は言い切れる。毎日こうやって甘やかされては駄目にされて、何度だってサンジの言葉に照れては、恋を覚えたばかりの少女のようにメロメロになってしまう。長い指で目にかかる私の髪をそっと耳にかけて、鼓膜を震わす甘い低音を響かせるサンジ。
「おれね、君が想像してるよりも一途なんだよ?信じられねェかもしれねェけど、君だけのおれになりてェの。だから、他に現を抜かす暇はねェって事」
サンジは私の額に自身の額をコツンと合わせて、お分かりかい、レディ、と悪戯な笑みをこぼすのだった。