短編
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底抜けに優しいサンジが傷付かないように言葉を選んだつもりだ、自身には生年月日も名前も何も無い。今まであったのは番号だけだ、前の数字が死ぬ度に繰り上げられる数字。
「ナマエちゃん、ねェって事は悲しい事じゃねェよ。だって、一から始まるって事だろ?君がナマエちゃんとして幸せになる為の人生はここからだ。それに誕生日がねェなら、おれが毎日、君が生まれた事に感謝するよ。ほら、言うだろ?毎日がハッピーバースデーって」
底抜けに優しいサンジはやっぱり優しくて、私の境遇を不幸になんてしなかった。ラッキーだね、君の人生はここからだ、そう言って不幸な過去ではなく、幸せな未来を一緒に考えてくれる人。私はそんなサンジに初めての恋をした、恋の勝手なんて分からないが、人を愛せる感情が自身の体に備わっていて私は少し安心した。
ニュース・クーが運んで来た新聞の端にある星座占いを見るのが好きだ、悪い事なんて大して書いてなくてラッキーアイテムまで教えてくれる。でも、私には誕生日なんて無いからラッキーアイテムも星座も分からない。そう言って、へらりと笑ってサンジにラッキーアイテムを教える私。
「今日の君のラッキーアイテムはこれ」
「ライター?」
「そ、だからさ、君にラッキーが訪れるように今日一日預っておいてくれ」
サンジは私の両手にライターをぽんと置くと、頭をくしゃりと撫でてキッチンに消えた。その背中が消えた扉を夢心地で見つめると、手の中のライターを宝物のようにぎゅっと握った。
サンジは毎日、私に私だけのラッキーアイテムを教えてくれた。ラッキーアイテムのラインナップはサニーの上で見つけられるものばかりで毎日、宝探しのような気分でサンジと手を繋いでラッキーアイテムを探した。
「君は宝探しが上手だね、海賊向きだ」
「ナミが喜ぶね」
「はは、確かに」
見上げた先にいたサンジの表情は想像よりも随分と穏やかで、視線を逸らすのが惜しいと思ってしまうくらいに美しかった。
「ナマエちゃん?」
「ん、えっと、何でもないわ」
誤魔化すように視線を逸らす私の手をサンジが自身の方に引き寄せた。
「おれの今日のラッキーアイテム」
サンジからのいきなりの抱擁に私は今日のラッキーアイテムすら口に出せそうにない、口からは情けない音が漏れるだけだ。
「……今日だけじゃねェな、君がサニーに乗った日からおれのラッキーアイテムは君自身だ。そのお陰で毎日、こうやって手を繋いで宝探しさ。だけど、海賊は宝を奪うモンだろ?」
だから、そろそろ君を奪っていいかい、とサンジは私の耳元で囁いた。
「答えはイエスかハイ、それかサンジくん大好き」
「……さんじくんが、だいすき」
緊張から声は情けなく震えてしまっている、そんな私にサンジは言葉を発さない。私は不安になってサンジを見上げれば、そこには顔を真っ赤にしたサンジがそっぽを向いていた。
「……サンジ?」
「自分で仕掛けた罠に落ちただけだよ」
「罠?」
「君が想像以上に可愛いって事」