短編
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ただの買い出し、よく言ってもお出掛け。私の認識は間違いなくこれだった。だが、サンジにとってはどうやらこれはデートだったらしい。デートだったの、と口を半開きにして動揺する私に向かってサンジは余裕の笑みを浮かべて私の髪をくしゃりと撫でた。
「おれはデートのつもりだったよ」
君は買い出しだと思っていたようだけど、そう言ってサンジは片手に持った買い物袋を少しだけ持ち上げる。
「レディとの買い物は全部デートだと思ってない?」
「今までだったらそうかもね」
髪から離れた手は私の手を握って、私とサンジの間で楽しげにブンブンと揺れる。子供みたいな仕草とは別にサンジの顔は先程から柔らかな笑みを浮かべて私の顔を覗き込んでいる。
「今は君に意識させようと必死になってる」
「必死な顔をしてから言いなさいよ」
「男は余裕ぶりたい生き物なの」
面倒な生き物ね、と素っ気なく返事を返す私に向かってサンジは同意だと言って肩を揺らした。面倒がスーツを着て歩いているような男だと最初の方は思っていたが今では一緒にいるのが何故か当たり前になっていた、アレと言えばソレと返ってくるような関係は居心地が良い。きっとそれを本人に言えば調子に乗るか、君は言葉足らずだからと言われるのが目に見えている。
「デートならもっとロマンチックな方がいいんじゃない?」
「食材が入った紙袋を持って空いた手で君の手を握るのも夫婦みたいでおれは好きだよ」
「……夫婦ねぇ」
いつも私の先を行くサンジ、私が気付いた時には恋人期間は終わり知らぬ間に夫婦になっていそうだ。こんな考えが頭を過ぎった時点でサンジの勝ちは既に決まっている。
「荷物を置いたらデートに付き合って」
「延長料金は?」
「良かったわね、タダよ」
ナミのように片手で金のマークを作って私は言葉を続ける。
「恋人としてならね」
「っ、くく、先に言われちまったね」
「女は待てない生き物なの」
先程のサンジの言葉を真似すれば、サンジは喉を鳴らして笑った。肝に銘じておくよ、と。