短編
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予期せぬ出来事が起きると人間は本当に固まるらしい、サンジは他人事のように自分自身の今の状況をそう分析するが体は固まったまま動かない。だが、頭の中は今の状況を理解しようと煩く騒ぎ立てる。
「……おれはこのまま死ぬのか」
自身の腹部を見ながら、サンジはそう口にする。その腹部にはナイフが刺さっているわけでも銃弾が貫通しているわけでもない、サンジからしたらナイフや銃弾の方が可愛らしく思える程の光景が目の前には広がっている。
「こ、ここに天使がいる」
その言葉の通り、サンジの腹の上には彼女の頭がある。サンジのワイシャツ越しの腹に顔を埋めて数十分このままの体勢を保っている。スーハーと吸われている気がするが彼女が何をしようがサンジの何十ものフィルターが掛かった瞳じゃ天使が戯れついてる幸せ空間でしかない。彼女の髪が真っ白なワイシャツに散る様子は美しく夜の彼女を思い出す、乱れたベッドシーツに乱れた彼女、天使を穢しているような背徳感にゾクリと身体を震わせて彼女と過ごす一夜はそれはそれは魅力的だ。だが、今の時間だってサンジにとっては同じくらい魅力的だ。彼女の行動の意図は分からないがきっと悪い事にはならないだろう。
「なァ、ナマエちゃん」
彼女はサンジの腹に顔半分を埋めたまま、視線だけをサンジの顔に向ける。
「これは何の気まぐれだい?」
「やだった?」
「いいや、サイコーの気分」
のんびりした彼女の声にニッコリと笑い、サンジはそう答える。そして、彼女の伸びた髪に指を絡ませて教えてレディと甘ったるい声を出す。
「補給」
「補給?」
彼女はサンジの腰にしがみつくように腕を回すと拗ねた幼子のような表情を浮かべる。
「構ってくれないから」
顔を両手で覆って天を仰ぐサンジ、最近思い通りに二人の時間を取ることが出来ずにいたのは事実だが理由があまりにも可愛い。
「エッ??おれに構われたかったってこと?!嘘だろ可愛すぎる……っ、あまりにも可愛い」
「寂しかったの」
「うっ……可愛い、寂しい思いさせちまってごめんな、今日からは反省して君を中心に生きていくとおれは決めた」
決意を胸に片手をグーにしてそう言い切るサンジ。
「そこまでは別にいい」
「そこは、嬉しい、サンジ♡じゃないの?」
「ふふ、似てないね」
「酷ェ、繊細な男心を弄ぶなんて」
わざとらしい泣き真似をしながらサンジは彼女の反応をチラチラと見る。そんなサンジの腹に勢いをつけて顔を埋める彼女。
「……今日だけ」
「おれは毎日でも補給されてェけど」
「イチャイチャし過ぎってナミに怒られちゃうよ」
サンジは自身の腹に乗っかった彼女を抱き上げると腕の中に招待する。彼女はされるがままサンジの言葉に耳を傾ける。
「いっしょに怒られよ」
「サンジが主犯」
「っ、くく、違ェよ」
おれ達は共犯だよ、そう言ってサンジは彼女の満更でも無さそうな表情を見て甘い笑みをこぼした。