短編
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幸せな人生設計を考えた所で今以上なんて見つからなかった。いつの間に自身はこんな欲の無い人間になったのだろうかと頭を悩ましても、その幸せで花でも咲きそうな頭にはサンジのこれまた花が咲いたような笑顔が浮かんだだけだった。女の幸せは恋愛だけではない、だが、幸せを考えた時に真っ先に浮かんだのはサンジの夢見がちな言動だったり過剰な愛情表現。「(……あぁ、毒されてるな)」
だから、こんな戯れすらおかしくて堪らない。静かに歩み寄る足音、完璧に足音も気配も消せるくせに少しだけ残しておくのはサンジの気遣いだ。怖がらせたくないから、きっと、そんな単純な理由からだろう。
「捕まえた♡」
サンジの長い腕が私の腰に回り、ぎゅっと背中から抱き寄せられる。着衣したままでは分からないがサンジの体は随分と逞しい、あちこちに筋肉がしっかりと付き、手加減なしで抱き着かれたら私の体なんて簡単に壊れてしまいそうだ。
「考え事かい?」
「ん、サンジの事よ」
「君ってたまにそういう所あるよね」
「どういう所?」
振り向いた私の無防備な唇はサンジの男にしては厚い形の良い唇に攫われていた。何が原因かは分からないがサンジはいつも突然だ、突然スイッチが入り、私を可愛がる。
「こういう事したくなっちゃうからあんまり可愛いこと言っちゃ駄目だよ」
可愛い事と言われても私には判断が出来ない、常日頃からサンジの可愛いは止まらない。私が手を振れば可愛い、私が咀嚼しているだけで可愛い、しまいには息をしているだけでサンジの息の根を止めてしまいそうな事もある。後者はよく分からないがサンジの口にする可愛いは幅が広すぎるのだ。
「何しても可愛いんでしょ?」
「正解」
だけど、とサンジは含みのある笑みを浮かべるとまた夢見がちな言葉を口にした。今日より明日の君はもっと可愛いよ、と。
「……なら、二十年後の私は大変な事になってるわね」
「大変なのはおれじゃねェかな?君の可愛さに心臓がどうにかなっちまうかも」
ちゅ、っと自身から奪ったキスはやけに甘い。
「人工呼吸してあげる」
「喜んで!」
「なにそれ」
殺しても死ななそうな花畑のような男に捕まった私はその甘い蜜に惹かれた蜜蜂のようだ。それとも甘い甘い毒に絡めとられた私は蜘蛛の糸に捕らわれた蝶だろうか。どちらにせよ、もうサンジ無しでは生きられないのだ。