短編
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レディは全員特別、そして仲間である私達三人はその特別の括りの中でも特に特別扱いをされていると思う。そこに恋愛感情は存在していない、少なくともサンジ、ナミにロビン、その三人の中にあるのは親愛だ。そこに恋愛感情などという邪魔な感情を持ち出したのは私だけだ、仲間である事に優越感を抱き、サンジがあちらこちらにフラフラしようがメロリンとハートを飛ばそうが一瞬の感情だと思っていた。だって、その女達はクルーでも何でもない。
「自慢の恋人を紹介してもいいかな」
サンジの口から出た自慢の恋人という言葉に目の前が真っ白になる、貧血の時のように血がスッと失われていくような感覚がする。それを誤魔化すように私は近くの手摺りを掴んだ。
「うん」
軽く咳払いをすれば引き攣った声が正常に戻る、今の私にとって仲間である事はただ辛いだけだ。行動が遅いと昔から言われてきた、今の現状に胡座をかいていた私では相手を貶す事も二人の邪魔をする事すら烏滸がましい。私は引き攣りそうな口角を綺麗に持ち上げると本心とは真逆の返事を返す。
「自慢したいほど素敵な人なのね」
「……っ、くく、もしかしてさ、勘違いしてる?」
突然、場違いな笑みをこぼしたサンジに私は情けない声を上げる事しか出来ない。サンジはテーブルに置いてあった上質な長方形のケースに手を伸ばし、中を開く。
「これがおれの自慢の恋人だよ」
自慢の恋人は彼女の想像とは異なるものだった、ケースの中にはサンジが普段愛用している包丁がポツンとそこに置かれていた。
「……包丁?」
「そ、島で手入れして貰ったおれの恋人を自慢したくてさ」
君は勘違いしてたみてェだけど、そう言ってくすくすとおかしそうに肩を震わすサンジに私の頬は熱を上げるばかりだ。
「だって、恋人って……!」
「相棒であり恋人だろ?」
「そうだけど、そうなんだけど……!違うじゃない!」
子供のようにムキになって滑稽だろう、サンジの言っている事は分かるが先程までのモヤモヤした気持ちを返して欲しいと頭を抱える事ぐらい許して欲しい。自慢の恋人、そんな一言に柄にもなく動揺して泣いてしまいそうだった自身が馬鹿みたいで嫌になる。
「それにさ、恋人にしたいレディは鈍感でさ。参っちまう」
「また包丁?それか次はフライパン?」
「はは、君の話だよ」
目を見開く私にサンジはまた肩を震わせて、目が落ちちまいそうだよ、と顔の下に両手を差し出してくる。は、え、と言葉にならない声を上げる私にサンジはこう続けた。
「脈アリって思ってもいいかい?レディ」
この反応で察して、と力なく答える私にサンジは追い打ちを掛けるようにこう口にした。君の自慢の恋人になる男の名前を教えて、と。