短編
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どちらから提案したのかはもう覚えていないが、二人にとって寝る前の通話はいつの間にかナイトルーティンの一部になっていた。二十二時から都合が合った日だけ、で始めた筈の通話は今まで欠かされた事が無い。他愛も無い話からテレビから流れるアクション映画の感想だったり、時には些細な悩み相談だったり、眠気が訪れるまでの優しい時間は二人にとって大事なものだった。
「今日なに食った?」
「オムライス食べた、サンジは?」
「おれ、親子丼。惜しいね」
「ふふ、惜しいって卵って共通点しか無いじゃない」
そう言って笑う彼女の笑い声がスマートフォンを通してサンジの耳に届く。声は人間が持つ楽器だと言うが、サンジにとって彼女の声はどこか懐かしく安心するものだった。安心感から来る心地良い眠気に欠伸を一つ溢せば、また眠気がサンジを包み込む。
「あー……先に謝っとくね、寝落ちしたらごめん」
一言断りを入れるとサンジは下がってくる瞼にグッ、と力を入れる。それでも眠気は徐々に近付き、サンジの頑張りを無駄な抵抗だ、とでも言うように襲い掛かる。
「サンジ眠いなら寝ていいわよ?」
「ん」
「また明日も出来るしね」
「ん」
「予定空けとくから」
切んの?とサンジの眠そうな声が返ってくる。どこか不服そうなサンジの様子に彼女はスマートフォンの向こう側でくすくすと肩を揺らす。
「だってサンジ寝ちゃいそうだし」
「……君の声を聞きながら寝てェ」
「子守唄のリクエスト?」
「っ、はは、悪くねェな」
歌って、ナマエちゃん、そう言ってサンジは重い瞼をゆっくりと閉じる。そうすれば彼女自身の楽器がゆったりと音を奏で、その心地の良い音にサンジの意識が沈む。サンジの穏やかな寝息が聴こえるまで彼女は優しい音色を響かせる、彼だけに捧げるこの音がいい夢に導いてくれますように、そう願って。