短編
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サンジはいつも決まって真ん中の車両を選ぶ。以前、それについて彼女が理由を尋ねた時は当たり前とでも言いたげにサンジはこう言った。前か後ろで事故があっても君を守れる位置だ、と。今だってガタン、ゴトンと揺れる五両目で彼女の体が少しでも傾けば、サンジは彼女の腰に腕を回して自身の体に寄り掛からせる。
「おれに寄り掛かっていいからね」
「ありがとう」
彼女はサンジに軽く凭れ掛かると、遠慮がちにサンジのスーツのジャケットを軽く掴む。車内で表立ってイチャイチャするわけではないが、誰から見ても恋人同士だと分かる触れ合いが気恥ずかしくて彼女はついショートブーツの爪先に視線を落とす。サンジは彼女の初々しさを好ましいと感じている、お互いのひとり暮らしの自宅を行き来してキス以上の事だって両手の指の本数以上にしているというのに彼女は未だに恋人らしい甘やかな接触に弱い。
彼女の艷やかな髪越しに見える頬が色付いて、ついサンジは意地の悪い事を言いたくなる。
「熱でもある?」
眉を下げて、心配しているような素振りをするサンジ。彼女の薄い頬に手を添えて、色付いたままの頬を親指でなぞる。水仕事でカサついた指先が彼女の白肌を傷付けないようにゆっくりと肌の上を滑っていく。彼女はサンジのそんな考えに気付いていないのか、左右に首を振って熱は無いと小さく笑う。
「なら、良かった」
「……サンジのせいよ」
「ん?おれ?」
彼女はジャケットから手を離すとサンジの肉の付いていない脇腹を軽く摘む。
「確信犯なのバレてるわよ」
「あはは、バレちゃった」
ごめんね、と少し屈んで彼女の耳元で謝罪をすれば、脇腹を掴んでいた指に力が入れられる。
「っ、くく、痛ェって」
「痛くしてるの」
彼女はそう言ってサンジの脇腹から手を離す。サンジは時々こうやって彼女の機嫌を損ねたくなる。もう、と言って睨みつけてくる彼女の頭をポンポンと撫でて、車窓から目まぐるしく変わっていく日常を見つめる。この変わりゆくシーン全てに彼女と積み重ねた当たり前があればいい、とサンジは思う。いつもの車両と慣れない戯れ合い、隣にはちょっと不貞腐れた可愛らしい彼女、それだけあればサンジは何処へでも行ける気がした。ガタン、ゴトンと二人を乗せて。
「おれに寄り掛かっていいからね」
「ありがとう」
彼女はサンジに軽く凭れ掛かると、遠慮がちにサンジのスーツのジャケットを軽く掴む。車内で表立ってイチャイチャするわけではないが、誰から見ても恋人同士だと分かる触れ合いが気恥ずかしくて彼女はついショートブーツの爪先に視線を落とす。サンジは彼女の初々しさを好ましいと感じている、お互いのひとり暮らしの自宅を行き来してキス以上の事だって両手の指の本数以上にしているというのに彼女は未だに恋人らしい甘やかな接触に弱い。
彼女の艷やかな髪越しに見える頬が色付いて、ついサンジは意地の悪い事を言いたくなる。
「熱でもある?」
眉を下げて、心配しているような素振りをするサンジ。彼女の薄い頬に手を添えて、色付いたままの頬を親指でなぞる。水仕事でカサついた指先が彼女の白肌を傷付けないようにゆっくりと肌の上を滑っていく。彼女はサンジのそんな考えに気付いていないのか、左右に首を振って熱は無いと小さく笑う。
「なら、良かった」
「……サンジのせいよ」
「ん?おれ?」
彼女はジャケットから手を離すとサンジの肉の付いていない脇腹を軽く摘む。
「確信犯なのバレてるわよ」
「あはは、バレちゃった」
ごめんね、と少し屈んで彼女の耳元で謝罪をすれば、脇腹を掴んでいた指に力が入れられる。
「っ、くく、痛ェって」
「痛くしてるの」
彼女はそう言ってサンジの脇腹から手を離す。サンジは時々こうやって彼女の機嫌を損ねたくなる。もう、と言って睨みつけてくる彼女の頭をポンポンと撫でて、車窓から目まぐるしく変わっていく日常を見つめる。この変わりゆくシーン全てに彼女と積み重ねた当たり前があればいい、とサンジは思う。いつもの車両と慣れない戯れ合い、隣にはちょっと不貞腐れた可愛らしい彼女、それだけあればサンジは何処へでも行ける気がした。ガタン、ゴトンと二人を乗せて。