短編
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コンシーラーで欠点を消してから、粉を叩いて、眉の足りない部分をペンシルのアイブロウで付け足していく。私の顔がゼロから四十パーセントになっていく姿を隣で楽しそうに見ているサンジ、たまに化粧品のパッケージを眺めながら、君に似合いそうな色だね、と蕩けそうな笑みで私に話し掛ける。
「なら、これにするわ」
数種類のアイシャドウの中からそれを選び、瞼に色を重ねれば、先程よりも顔が少しだけ華やかになる。まだ、六十パーセントね、と独り言を溢せば、サンジは首を傾げて、何が六十パーセントなんだい、と私に問い掛ける。
「まだ、お化粧途中だから六十パーセント」
「これより可愛らしくなっちまうのかい……?」
期待してて、そう言ってアイラインを描き始める私。アイラインを描いている時の顔なんて、きっと見れたものじゃないのに、サンジはコクコクと何度も頷いて、前のめりで私を見つめる。
「お口が開いてるナマエちゃんも可愛いなァ、でへへ」
もう、と睨み付ける私にサンジは悪意のない笑みで、可愛い、怒ってる顔も天使みてェだ、と好き勝手に褒めてはだらしない顔をよりだらしなくしている。サンジに見られながらのお化粧は少しだけ時間が掛かる、普段だったら慣れた手付きでさっさと済ませてしまうのに、サンジの前だとわざと時間を掛けてしまう。この、だらしない顔から発せられる「かわいい」が恋しくて、私の中の女の子の部分が顔を出すのだ。
元々、薄く存在しているほくろの上にちょんとアイラインをのせる私、近くから見ても描きぼくろには見えない。
「……なァ、ナマエちゃん」
なぁに、とサンジの方を向けば、サンジは私のほくろに指を伸ばす。
「ほくろのジンクス知ってる?」
私は正直に首を横に振り、知らない、と口にする。そうすれば、サンジは少しだけ憂いた表情で、前世の恋人にキスされた痕なんだって、と私のほくろを撫でた。
「……この下に痕をつけた野郎が羨ましいよ」
「え、待って、来世の私どうなっちゃうの」
あなたが全身くまなくキスするからほくろだらけになっちゃうじゃない、とサンジの胸板を叩く私。サンジは何が面白いのか、声をあげて笑うと私の顔中にキスの雨を降らす。
「ねぇ、聞いてた!?」
「来世も君を見つければいいんだろ?おれのキスでメイクアップしたナマエちゃんを」
「……ほくろだらけでも知らないわよ」
「君なら、きっと百パーセント可愛いよ?」
常識を口にするようにサンジはそう語り、そして、おれにもたっっっくさんキスしていいからね、と自身の頬を何度も指差してキスを強請る。私は手に持っていた口紅をポーチの中にしまうと、サンジの唇にチュッと唇を押し付けた。
「……口紅はいいの」
「剥がされちゃいそうだもの」
「おれは君に脱がされちゃいそうだけど」
セクハラ、と笑う私の首筋に顔を埋めて、サンジはまた一つ来世のほくろをプラスしたのだった。